転職時の手続きは?雇用保険のしくみと疑問に答えます
転職経験のある方なら、「雇用保険」=「失業保険(失業給付金)」としてご存知だと思います。
でも実は雇用保険には、会社に在籍中の方でも、支給される給付金があることをご存知でしょうか?
また転職時には、どんな書類が必要になるのか把握できていますか?
雇用保険って利用する機会は少ないので、よくわからないことが多いですよね…。
この記事では、法務部や人事部で雇用保険の加入や説明に携わってきた筆者が、雇用保険のしくみと転職における疑問について詳しく解説します。
役立つ情報をわかりやすくご説明しますので、ぜひご覧ください。
雇用保険のしくみ
雇用保険とは一体どんな制度なのでしょうか?
まずは雇用保険のしくみを詳しく見ていきましょう。
雇用保険とは?
雇用保険とは、
- 失業状態にある労働者に対して給付金を支給する
- 労働者の能力開発のための助成金を会社に支給する
このようなことを行う公的な保険制度です。
雇用保険の保険料は、会社と労働者が分担して毎月支払います。給与明細の控除欄に「雇用保険」の項目がありますよね。
社長が会社を設立して労働者を雇う時点で、その会社は雇用保険の適用事業所となります。
雇用保険の適用事業所である会社に、労働者が入社すれば強制的に雇用保険に加入です。入る・入らないの選択をすることはできません。
またパートやアルバイトでも、以下の条件をどちらも満たす場合には、必ず雇用保険に加入する必要があります。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる
- 1週間の所定労働時間が20時間以上である
雇用保険に加入した労働者は、在籍中や退職後に雇用保険の各種給付金を申請すると、支給を受けられるシステムとなっています。
雇用保険被保険者証とは?いつもらえる?
会社に就職すると、労働者は雇用保険に加入します。雇用保険の加入手続きを行うのは会社です。
雇用保険に加入すると、会社から以下の書類を渡されます。
会社は労働者が入社した翌月10日までに、ハローワークに雇用保険の申請を行う必要があります。
そのため遅くても入社2ヶ月後までには、雇用保険被保険者証は渡されるでしょう。
以前は雇用保険被保険者証を会社が保管することが多かったのですが、現在は厚生労働省の指導によりで「本人に渡すこと」とされています。
事業主の行う雇用保険の手続き|厚生労働省 ※項目2の「雇い入れ時の被保険者証の本人への交付」PDF参照
雇用保険被保険者証とは、雇用保険における給付の支給申請をする際に、必要となる書類です。
また厚生年金の裁定請求でも添付が必要となりますので、きちんと保管しておきましょう。
支給開始年齢になったとき|日本年金機構 ※項目2-(1)の「請求するときに必要な書類等」参照
被保険者証の再発行にかかる期間は?
雇用保険被保険者証を紛失したかもしれない…
このようなときは、まずは会社で保管していないか確認してみましょう。
人事部や総務部で、社員の履歴書などといっしょに保管しているケースもあります。
もし、会社でも保管していないという場合は、再発行をしてもらいましょう。
再発行の申請方法は以下の2つがあります。
- 最寄りのハローワークに直接出向いて再発行の申請をする
- 政府の電子申請システムから申請する
ハローワークで申請すれば、雇用保険被保険者証は無料で即日発行されます。
下記の書類を持って窓口で申請しましょう。
- 運転免許証など本人確認が行える書類
- 現在、または最後に就職していた会社の住所、電話番号がわかる書類(再交付申請書に記載する必要があるため)
雇用保険被保険者番号とは?
雇用保険被保険者番号とは、雇用保険被保険者証の中段に記載された、11桁(4桁−6桁−1桁)の番号のことです。 ※上図参照
雇用保険では、一人にひとつの被保険者番号が付与されており、転職しても同じ番号をずっと使い続けます。
転職したときに雇用保険被保険者証が必要となるのは、要するにこの被保険者番号を知りたいからです。
雇用保険被保険者番号が判ればよいため、転職先に提出する雇用保険被保険者証は、原本ではなくコピーでもOKとされます。
雇用保険の給付について
雇用保険では、失業時の救済と雇用創出のために給付金が支給されます。
ここからは、よく利用される4つの給付制度をご紹介します。
失業時に支給される基本手当(失業保険)とは?
失業保険(失業給付金)とも呼ばれ、みなさんがもっとも関心が高いと思われるのが基本手当です。
雇用保険の中心的な事業であり、労働者が会社を辞めて失業した場合に、支給される給付金となっています。
基本手当(失業保険)を受給するには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。
- 雇用保険の被保険者であった期間が十分にある
- 現在失業の状態にある
- 実際に求職活動をしている
- ハローワークで認定を受けた
また、要件を満たして支給される場合でも、以下の内容で支給額が大きく変わります。
- 直近6ヶ月の平均給与額(賞与を除く)
- 被保険者であった期間
- 年齢
- 離職理由
基本手当が支給される期間を「所定給付日数」といいますが、自己都合や定年退職者などは、倒産などでやむなく退職した人と比べると、所定給付日数は大幅に短くなります。
さらに自己都合による退職者の場合は、支給開始日が遅くなる「給付制限(3ヶ月)」も発生します。
※給付制限の期間はこれまで3ヶ月でしたが、制度が改正されて2ヶ月に短縮されました。
基本手当(失業保険)の受給期間は原則1年間です。
例えば330日の所定給付日数がある場合でも、退職日の翌日から1年を過ぎてしまうと、基本手当の支給は打ち切られてしまいます。
退職したら、できるだけ早めにハローワークで申請を行いましょう。(ハローワークに持参する書類等は後述しています)
早期就職時に支給される再就職手当とは?
再就職手当とは、基本手当を受給する資格のある労働者が再就職した場合に、基本手当の支給残日数に応じて支払われる一時金のことをいいます。
まだ失業保険の給付日数が残っているのに、急いで再就職するのはもったいないな…
上記のような考えで、再就職できる人が時期を遅らせることが無いように、早く再就職できれば、その分だけ多くもらえるのが再就職手当です。
パートでの再就職も対象になります。
再就職手当についても、迅速な申請をおすすめします。
再就職した翌日から1ヶ月以内に、再就職手当の申請書をハローワークに提出する必要があるのですが、申請書には会社の代表者印を押印する必要があります。
本社が遠方だったり会社の処理が遅いと、提出期限を過ぎてしまう場合がありますので、早めに書類作成を始めましょう。
ただし、支給のために満たすべき要件が多くありますので、詳しいことは以下の記事をご覧ください。
在職中でも支給される教育訓練給付金とは?
教育訓練給付金とは、在職中または退職後1年以内に、仕事のスキルアップや資格取得を目的として、受講した講座費用の一部を後払いで支援してもらえる制度です。
ただし、以下の要件をどちらも満たしている必要があります。
- 厚生労働大臣の指定する講座を受講している
- 講座の全課程を修了している
教室に通う講座から通信教育まで、さまざまな講座があるため、教育訓練給付金制度を使ってスキルアップを図ることもオススメです。
育児休業に支給される育児休業給付とは?
育児休業給付とは、1歳未満の子どもを養育するために、育児休業をした場合に支給される給付金のことです。
もちろん女性だけではなく、男性が育児休業を取った場合でも支給されます。
支給されるのは子どもが1歳になるまでの期間で、休業開始前賃金の50%(初めの6ヶ月は67%)が毎月支給されます。
ただし、休業中に給与が支払われている場合は、給与の額によって給付金が減額もしくは不支給となります。
こちらの育児休業給付のほかに、
- 介護休業給付:
家族の介護のために介護休業を取得した際の給付金 - 高年齢雇用継続給付:
60歳以上の労働者の給料が低下した場合に差額の一部を負担する給付金
上記を合わせた3つの給付制度は、「雇用継続給付」と呼ばれており、会社側で支給申請を行うのが基本です。
育児休業給付などを申請したい場合は、会社の人事部・総務部に依頼しましょう。
転職時の雇用保険の手続きはどうやるの?
転職する際には、どんな書類が必要になるのでしょうか?
ここでは、会社の退職と再就職で必要となる書類を見てみましょう。
退職時の流れと必要書類
まずは在職中に、会社から雇用保険被保険者証を受け取っているかを確認して下さい。まだ受け取っていないなら、退職前に会社に確認して受け取りましょう。
雇用保険被保険者証以外で、退職時に会社から受け取るのはこの2点です。
- 年金手帳:自分で保管している場合は不要
- 源泉徴収票:退職後1ヶ月ほどで会社からもらえます
雇用保険被保険者離職票について
まだ転職先が決まっていない場合は、会社から「雇用保険被保険者離職票-1・2」を発行してもらいましょう。
退職後2週間ほどで発行してもらえるはずです。
【雇用保険被保険者離職票-1】
【雇用保険被保険者離職票-2】
失業保険の申請をする場合
基本手当(失業保険)の申請をするには、以下の書類を持って最寄りのハローワークに行きましょう。
- 雇用保険被保険者離職票-1
- 雇用保険被保険者離職票-2
- マイナンバー確認書類(マイナンバーカード、通知カードなど)
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 証明写真(縦3cm×横2.5cm)2枚
- 印鑑(シヤチハタ不可)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
基本手当(失業保険)の申請手続きに関しては、以下の記事で解説していますので、詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。
再就職時の流れと必要書類
再就職先が決まったら、入社日に雇用保険被保険者証を持参しましょう。
ほかの必要書類については、再就職先の指示に従ってください。とくに指示がない場合でも、以下の書類は持参しておくことをおすすめします。
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- マイナンバー
- 源泉徴収票
雇用保険被保険者証と離職票は違う?退職証明書とは?
転職時の必要書類について、聞き慣れない名前でいろいろあってわかりにくいですよね。
ここでは雇用保険被保険者証、離職票、退職証明書の違いをご説明します。
雇用保険被保険者証は転職先に提出が必要
雇用保険被保険者証とは、ハローワークが発行して、会社を通して労働者に手渡される公的な書類です。
おもに雇用保険の給付金を申請する際に使われ、在職中なら教育訓練給付金などの申請時に、必要となる書類となります。
また転職した際には、雇用保険被保険者証は転職先に提出する必要がある書類です。
離職票はハローワークが発行する、失業時に使う公的書類
離職票(雇用保険被保険者離職票-1・2)とは、退職後に会社が申請することで、ハローワークが発行して、会社から本人へ渡される公的な書類です。
基本手当(失業保険)の受給申請のために使用するほか、国民健康保険に加入する際の申請(退職日を確認するため)にも使用します。
転職先から離職票を提出するよう指示があることもありますが、
- 確実な在籍期間を知りたい
- 退職理由を確認したい
上記などを確認するための目的となります。
本来は提出する義務はありませんが、会社が指示する場合には提出するようにしましょう。
退職証明書は会社が発行する私文書
退職証明書とは、会社が発行する私文書ですので、とくに決められた書式はなく、退職者が希望する場合のみ発行される書類です。
労働基準法の第22条では、労働者が退職する場合に、以下の項目のうち労働者が請求した項目に関する証明書を、会社側が発行する必要があると定められています。
- 使用期間
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由
退職証明書を使用する用途に応じて、会社側に請求項目を指定するようにしましょう。
おもな使いみちとしては、以下のとおりです。
- 転職先に提出するため
- 国民健康保険の加入に使用するため(退職日を確認するため)
退職証明書と離職票については、以下の記事でさらに解説していますので、詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
有給消化中に転職したら、雇用保険ってどうなる?
有給休暇を消化している期間なのに、転職先から出社してほしいと言われた…
このような場合に、出社して働いても問題は無いのでしょうか?雇用保険はどうなるのでしょう?
二重就労禁止規定の確認を
法律的なことをいうと、二重就労を禁止するような規定はないので問題ありません。
ただし、退職する会社と転職先の両方に対して、
ということを確認しておきましょう
転職先には「現在は有給消化中である」ことを説明したうえで、もし禁止する規定がある場合は、
二重就労の禁止規定に触れてしまうため、有給消化後の就業でお願いします
このように転職先に伝えましょう。
それでも転職先が、
すぐに働いてほしい
ということであれば、雇用保険や社会保険で影響があるので、退職する会社にも報告をしておく必要があります。
雇用保険の二重加入はできない
二重就労をする場合に問題となるのが、どちらの会社の雇用保険に入るかということです。
なぜなら、雇用保険は二重加入ができません。
そのため雇用保険については、転職先の会社と退職する会社で、「どちらか給与の高い方で加入する」ことになります。
もし転職先の給与が低い場合は、転職先で働きながらも、
という、このようなあべこべな状態になってしまうのです。
ちなみに社会保険(健康保険、厚生年金)は、二重加入していても問題ありません。
ただし2つの会社の給料を合算して、それぞれの保険料を計算する必要があるので、手続きが非常に煩雑になってしまいます。
法的には問題ない二重就労ですが、各種保険の手間を考えると、できれば避けたほうがよいでしょう。
雇用保険で経歴詐称はバレる?
前職は理由があって1週間で退職したので、履歴書には書きたくない…
このような経歴詐称は、雇用保険でバレてしまうのでしょうか?
雇用保険では前職の会社名と入社日がわかります
転職先に提出する「雇用保険被保険者証」ですが、「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」とセットになって、通常は1枚で発行されて渡されるはずです。
そしてこの通知書には、前職の会社名と入社日が記載されています。
通知書に記載されている内容が、履歴書等に記載した前職の入社日と違っていたり、会社名が異なっていれば、詐称はバレてしまうでしょう。
転職先で必要なのは「雇用保険被保険者証」のみなので、会社名や入社日が記載されている通知書を切り離して、被保険者証だけを提出する方法もあります。
ただし雇用保険被保険者証は、通常は切り離さずに、そのまま提出することがほとんど。
あえて切り離して提出することで怪しまれて、退職証明書などの確認書類を求められるかもしれません。
経歴詐称は雇用保険以外でバレてしまう
雇用保険被保険者証だけで、経歴詐称がバレてしまうことはありません。
しかし怪しまれると、転職先から退職証明書の提示を求められる可能性があります。
退職証明書は、労働基準法22条に基づいて作成するものなので、前の会社に対して虚偽の記載を依頼することは不可能です。
退職証明書で確認すれば、在籍期間などから経歴詐称はバレてしまうでしょう。
また、源泉徴収票にも会社名や年収などの記載がありますから、そこから詐称がバレてしまう可能性もあります。
- 転職先の社員が、前職の社員と知り合いだった
- SNSなどで前職のことを話してしまった
上記のように、どこからバレるかは検討がつかないものです。
経歴詐称がバレてしまうと、入社前なら内定取り消し、入社後なら解雇といった厳しい措置が取られるでしょう。
職歴などの経歴は正直に記載したうえで、自己アピールできる項目に力をいれて、就活に挑むことをオススメします。
まとめ:雇用保険を上手に活用しよう!
今回は、筆者の人事部・法務部の経験にもとづいて、雇用保険のしくみと転職時の疑問点などについて、詳しくお話ししてきました。
転職を考えていない方でも、教育訓練給付金などの利用で、雇用保険を使うことがあるかもしれませんね。
また、転職時に必要となる書類についても、ご理解いただけたのではないでしょうか。
最後の補足として付け加えると、雇用保険の給付を受けるために必要な要件は、とても細かく定められています。
以下のサイトで概要などを確認した上で、できればハローワークにも出向いて、自分が希望する給付が受けられるか、注意事項なども確認してみましょう。
申請書の提出時期など、ちょっとしたことで受給できなくなるのは、もったいないですからね。
この記事を参考にして、雇用保険を上手に活用して、仕事のスキルアップや理想的な転職を目指しましょう!
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