退職証明書と離職票はどんなときに必要?それぞれの違いや疑問点を解説
はじめて会社を退職する場合は、「退職証明書」と「離職票」という言葉を聞いたときに、
それぞれどんなときに使うの?
似たような用途のイメージだけど、なにが違うの?
このように思う方も多いかもしれませんね。
どちらも自分から会社に請求する書類で、それぞれに重要な役割があるのですが、会社がていねいに説明してくれることは少ないようです。
この記事では、退職証明書と離職票について、それぞれの書類の役割や必要になる場面、よくある疑問に詳しく解説しています。
かつて人事部で、退職証明書や離職票の発行に携わってきた筆者が、わかりやすく説明しますので、退職時の書類について知りたい方はぜひご覧ください。
退職証明書と離職票が必要になる場面とは?
まずは退職証明書と離職票が、どんな場面で必要になるのか確認しておきましょう。
転職先が決まっておらず、失業手当を申請する場合:【離職票】
退職する時点で、まだ次の転職先が決まっておらず、雇用保険の失業手当をハローワークに申請する場合は、離職票が必要です。
すでに転職先が決まっている場合は、失業手当の手続きは行いませんので、離職票は原則不要となります。
転職先が決まっておらず、国民健康保険を申請する場合:【離職票】か【退職証明書】
退職する時点で、まだ次の転職先が決まっておらず、国民健康保険に加入する場合。
役所で加入申請をおこなう際に、離職票か退職証明書のどちらかが必要です。
役所では、この書類で退職日を確認するだけですので、離職票や退職証明書はその場ですぐに返却してもらえます。
すでに転職先が決まっている場合は、転職先の健康保険に加入しますから、どちらの書類も不要です。
退職後に家族の健康保険へ扶養で入る場合:【離職票】
退職後に、家族の健康保険へ扶養家族として加入する場合は、離職票が必要となります。
また、健康保険組合によっては、以下の場合などで提出する書類が変わってきます。
- 雇用保険を受給しない人
- 雇用保険を受給予定の人
- 雇用保険の受給を終了した人
詳しくは、ご家族が加入している健康保険組合のホームページで、添付書類の確認を行いましょう。
以下の記事では、奥さまが「協会けんぽ」の場合に、扶養に入る手続きについてまとめていますので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
転職先から提出を指示された場合:【退職証明書】
転職先から、
退職証明書を提出してください
このような指示があった場合は、退職証明書が必要です。
まれに離職票の提出を求める会社もあるようですが、離職票は退職証明書とは異なる内容が記載されているので、提出したくないという方も多いでしょう。
そこで、転職先には、
退職証明書でもよろしいでしょうか?
このように確認してみてください。
提出物を退職証明書に変更してくれる場合もあります。
それでも転職先が離職票の提出を求める場合は、会社の指示に従いましょう。
離職票とは
離職票とはどのような書類で、発行するにはどうすればよいのでしょうか。
ここでは、離職票の詳細についてご説明していきます。
離職票は退職後の失業手当申請に必要な書類
離職票とは、退職後に雇用保険の失業手当(失業保険)申請を行うのに、必要となる書類です。
退職したときに会社から受け取るのですが、ハローワークが発行する公的な書類となります。
正式には「雇用保険被保険者離職票」といい、「雇用保険被保険者離職票-1、2」の2種類があります。
【雇用保険被保険者離職票-1】
【雇用保険被保険者離職票-2】
常に2種類を揃えて申請で使用するため、まとめて離職票と呼んでいます。
離職票を発行するときの流れは、以下のとおりです。
- 退職者が、会社に離職票の発行を依頼する
- 退職後10日以内に、会社がハローワークに雇用保険資格喪失と離職票発行の手続きを行う
- ハローワークが会社に離職票を交付する
- 会社が退職者に離職票を送付する
国民健康保険に加入する場合は、ハローワークの前に役所へ行こう
国民健康保険に加入する予定の方は、ハローワークの前に役所へ行って、国民健康保険の加入手続きを済ませておきましょう。
離職票をハローワークに提出してしまうと、もう戻ってきません。
しかし、役所での国民健康保険の手続きでは、離職票は確認するだけなので、提出してもすぐに返してくれます。
もし、先にハローワークに提出してしまった場合は、会社に退職証明書を発行してもらって、国民健康保険の申請を行う形になるので注意しましょう。
社会保険から国民健康保険に切り替える手続きについては、以下の記事で解説していますので、詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
離職票を発行してもらうには
離職票が必要な場合は、退職前に会社の人事担当者に、
離職票の発行をお願いします
このように依頼しましょう。
このときに、発行した離職票は、
- 家まで郵送してくれるのか?
- 退職後に会社へ取りにいくのか?
上記のどちらになるのかも、忘れずに確認することが大事です。
会社は退職者が出た場合は、
このように定められております。
離職票の発行を希望する場合は、退職する前に会社へ発行を依頼しておかなければなりません。
ただし退職後でも、離職票の発行は可能です。
○離職後一定期間が経過しても離職票の交付を受けることができますか。
「雇用保険被保険者離職票」(以下、「離職票」といいます。)は、通常は被保険者資格を失った際に事業主から提出される「雇用保険被保険者離職証明書」(以下、「離職証明書」といいます。)に基づいて、ハローワークが事業主経由で離職者に交付するものです。
離職時に「離職票」の交付を希望されなかった方が、後日「離職票」が必要になったため交付を希望される場合には、離職票の交付を受けることが可能です。
この場合、雇用されていた事業主に対して「離職証明書」の交付を請求していただき、事業主が「離職証明書」をハローワークに提出することにより、「離職票」の交付を受けることができます。
出典:北海道ハローワーク
転職先の内定が取り消しになってしまった場合などは、すぐに退職先に連絡をして、離職票を発行してもらいましょう。
会社から離職票がもらえない場合の対応
退職から1ヶ月くらい経っても、会社から離職票が届かない場合は、
離職票はいつごろ届きますか?
まずは会社に、このように問い合わせてみましょう。
もしかすると、会社側に「離職票が必要」ということが伝わっておらず、ハローワークで発行手続きを行っていないのかもしれません。
この場合は、急ぎで発行してもらうよう、会社に依頼をしてください。
忙しいので、発行手続きをする時間がないんだよ…
こんなふうに、明らかに会社の怠慢で発行が遅れている場合は、ハローワークに相談してみましょう。
ハローワークの担当者から、会社側へ書類提出の督促を行ってくれるはずです。
退職者からの求めがある場合、離職票を発行することは、会社には法律上の義務があります。
「求められても発行しない」ということは、会社が違法行為を犯しているということなのです。
忙しいのに会社に負担をかけて申し訳ない…
こんなふうに思うことはありません。
あまり日数が経ちすぎると、失業手当の受給にも影響しますので、早めにハローワークに相談して解決しましょう。
また、詳しくは後述しますが、退職証明書で失業手当申請の仮手続を行うこともできます。
会社が離職票の発行に応じない場合は、先に退職証明書で仮手続を進めながら、会社への離職票の催促を続ける方法をおすすめします。
離職票の発行手続きについては、以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方はこちらも参照してみてください。
ハローワークに提出する場合の離職票の書き方
退職後にハローワークで失業手当の申請を行う際に、離職票の必要箇所に記入を行う必要があります。
ハローワークで記入例を提示していますので、以下のリンク先を確認して記入しましょう。
ちなみに記入するのは以下の箇所となります。
書面の下段「求職者給付等払渡希望金融機関指定届」欄に、氏名・住所と希望する金融機関を記入する
※「金融機関による確認印」は、ハローワークに通帳を持参すれば不要です
- 書面右側の「離職者記入欄」の該当する離職理由に◯を記入
- 書面右下の「具体的事情記入欄(離職者用)」で事業主の記載した内容に異議がなければ「同上」と記入
- 書面右下の⑯欄に、事業主が◯をつけた離職理由に異議がなければ「無し」に◯をつける
- 書面右下の⑰欄に、署名・捺印
もし、離職票2の事業主(会社側)が記入した離職理由に異議がある場合は、離職票2へは記入せずに、ハローワークで担当者に相談してみましょう。
失業保険の申請手続きについては、以下の記事で解説していますので、詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
退職証明書とは
退職証明書とは、どのように使われて、どんな項目が記載されるのでしょうか?
ここでは、退職証明書について詳しく解説します。
退職証明書は会社が社員の退職を証明する書類
退職証明書とは、会社が労働者の退職などを証明する書類です。
退職者から依頼があった場合に、会社が作成して退職者に交付します。
用途として最も多いのは、転職先の会社から入社した際に、
前の会社の退職証明書を持参してください
このような指示を受けて、提出するケースです。
転職先の会社は退職証明書によって、
ということを確認します。
ちなみに退職証明書の発行は、法律(労働基準法第22条第1項)に基づいた会社の義務です。
退職時の証明(第22条)・解雇理由の証明(第22条第2項)|厚生労働省 秋田労働局
したがって、会社が退職証明書の発行を拒むことは、法律違反となります。
また、退職証明書には決まった書式がありません。
詳しくは次項でご説明しますが、記載すべき項目だけが決まっています。
一般的な会社では、Wordなどで独自に作成した以下のような書式を持っており、必要な項目を記載して、会社印を押印したうえで発行するのです。
【退職証明書の書式例】
記載されるのは退職者が望んだ項目のみ
退職証明書に記載される項目は、法律で以下のとおりと決められています。
- 勤務期間
- 業務の種類
- 地位
- 賃金
- 退職の事由
これらの項目は、すべてが記載されるわけではなく、退職者が記載を要望した項目だけが記載されます。
ですので、転職先から退職証明書提出の指示があり、必要な項目が記載されていた場合は、その必要項目を退職した会社に伝えましょう。
転職先からとくに項目の指示がない場合は、全項目を記載した退職証明書発行してもらった方が無難です。
退職証明書を発行してもらうには
退職証明書を発行してもらうには、退職した会社の人事担当者に、
退職証明書の発行をお願いします
このように依頼しましょう。
退職者からの依頼がなければ、会社に作成義務はありませんので、必要な場合は会社に依頼しなければ発行されません。
また前述したとおり、退職証明書に記載する項目は、退職者が要望したものだけを記載すれば良いとされています。
転職先から指示された項目があれば、忘れずにその内容を会社側に伝えましょう。
退職証明書と離職証明書は別の書類です
名称が似ていて紛らわしいですが、退職証明書と離職証明書はまったく別の書類です。
退職証明書とは、会社が発行し退職者に渡す書類となります。
一方、離職証明書とは、正式には「雇用保険被保険者離職証明書」といい、離職票発行のために会社がハローワークに提出する書類です。
離職証明書は、会社とハローワーク間でやりとりする書類ですので、退職者が受け取ったり記入することはありません。
ちなみに離職証明書は複写式になっており、その3枚目が「離職票‐2」として、退職者に交付されます。
退職証明書と離職票についての疑問点にお答えします
ここでは、退職証明書と離職票における具体的な疑問点について、詳しく解説していきます。
離職票は会社からいつもらえる?
離職票は、退職後2週間ほどで会社から送られてきます。
会社を退職してから、離職票が送られてくるまでの手続きの流れは、以下のとおりです。
- 社員が退職した日の翌日から10日以内に、会社はハローワークで雇用保険の資格喪失手続きをおこなう
- 退職者が離職票を希望している場合は、あわせて離職証明書を提出して、ハローワークに離職票を発行してもらう
- 発行された離職票を退職者宛てに送付する
上記の手間を考えれば、遅くても退職から1ヶ月後までには届くはずです。
もし、1ヶ月経っても届かない場合は、会社に問い合わせてみましょう。
転職先が決まっていても、離職票を発行してもらったほうがいいの?
転職先が決まっていれば、失業手当の申請は行わないですから、本来は離職票を発行してもらう必要はありません。
しかし筆者は、転職先が決まっていても、離職票の発行してもらうことをおすすめしています。
- 転職先からの内定が取り消しになってしまった
- 転職先がブラック企業で、すぐに辞めてしまった
かりに上記のような場合でも、離職票を発行してもらっておけば、すぐに失業手当の申請ができるのです。
転職先が決まっているので、離職票は必要ありません
会社にこう言って退職したのに、しばらくしてから、
やっぱり離職票を発行してもらえませんか…
上記のように依頼するのは、言いづらくないですか?
転職先で問題なく仕事が開始できたら、そのときは離職票は使わず保管しておけばよいのです。
転職先から提出するように言われているので…
会社へはこのように伝えて、念のために発行してもらうことをおすすめします。
転職先が決まっている場合の離職票発行については、こちらの記事もぜひご覧ください。
退職証明書は、離職票の代わりになるの?
退職証明書は離職票の代わりになりますよ!
こんなふうに断言しているサイトも見かけますが、実際のところはどうなのでしょうか?
筆者が最寄りのハローワークに問い合わせてみたところ、以下のような回答でした。
- 退職日から12日を過ぎており、離職票が会社から届かない場合は、退職証明書で失業手当の仮の手続きを始めることは可能です
- ただし、基本手当日額などの計算に離職票が必要なので、退職証明書だけですべての手続きを完結することはできない
- 会社に催促して、離職票が発行されたらすぐにハローワークに提出してください
退職から1ヶ月経っても、会社から離職票が届かない場合は、退職証明書で仮の手続きを進めると良いですね。
逆に離職票は、退職証明書の代わりになる?
それでは逆に、離職票が退職証明書の代わりになるのでしょうか?
転職先から、退職証明書の提出を指示されてしまった
退職先とは揉めたので、もう連絡したくないんだよな…
このようなケースの方もいるかもしれませんね。
しかし、この場合は「転職先による」としか言いようがありません。
ベストなのは、やはり転職先が求める書類を出すことです。
多少のわだかまりがあったとしても、
会社には法的な発行義務があるのだし…
このように考えて、退職先に退職証明書の発行を依頼しましょう。
退職証明書のなかに、自分が書くべき項目はある?
退職証明書とは、会社が作成・押印して発行する書類ですので、退職者が記入する項目はありません。
ただし、前述したとおり、退職証明書に記載する項目は、退職者が要望したものだけとなります。
したがって、「記載する項目を伝える」ということは必要です。
退職証明書は、退職して何年後まで発行してもらえる?
退職証明書の発行については、
上記のように定められており、退職した2年後までなら、何度でも発行を依頼できます。
退職から2年を過ぎると、会社側に作成の義務はなくなりますが、「発行していけない」ということではありません。
2年を過ぎてから退職証明書が必要になった場合でも、念のため退職先に発行を依頼してみましょう。
会社が退職証明書を発行してくれない場合、自分で作成しても問題ないの?
退職証明書を自分で作成したとしても、退職した会社の押印がされていなければ、転職先も受け取らないでしょう。
そして何より、会社による退職証明書の発行は、法律で定められているものです。
法的な義務があることを会社に伝えて、退職証明書を発行してもらいましょう。
退職から2年が過ぎており、会社側に義務がないから発行してくれない…
このような場合であれば、転職先にその旨を伝えて、納得してもらうしかありません。
まとめ:退職証明書と離職票の役割を知って、会社に発行を依頼しよう
今回は、退職証明書と離職票について、必要となる場面やそれぞれの違い、よくある疑問点について解説しました。
退職証明書と離職票は、名称も似ていて分かりづらいですが、どちらも重要な書類です。
それぞれの役割と必要な場面を再確認して、しっかり会社に発行を依頼しましょう。
あなたの退職手続きにおける不安が、この記事で少しでも和らげば幸いです。
セカンドゴングは40代の転職を応援しています!
当サイト(セカンドゴング)では、40代の転職に特化した転職ノウハウについて、
- 実際に40代で転職を経験した人
- 企業の採用担当・キャリアコンサルタントなど、転職活動に知見を有する人
上記のようなメンバーが数多くの記事を提供しています。
転職活動を攻略するためのコツとして、以下のようなコンテンツをご用意していますので、ぜひ参考にしてみてください。
また、当サイトにノウハウを提供している転職サポーターが、あなたの転職活動をお手伝いします。
さまざまなサポートをご用意していますので、悩みがある方はお気軽にご相談ください。