夫が退職するなら妻の扶養に入る方法もあり!手続きや要件を解説
サラリーマンを辞めてしまうと、健康保険や年金の保険料を会社が負担してくれなくなるので、
- 保険料の個人負担額が増えてしまう
というデメリットがあります。
妻が夫の扶養に入って専業主婦となれば、保険料の個人負担を無くすことができるのですが、じつは「夫が妻の扶養に入る」という逆パターンでも可能です。
一定の要件を満たせる場合は、夫が妻の扶養に入ることで、健康保険や年金の保険料負担をすべて無くすことができます。
ただし、いざとなると手続きがよくわからなくて、どうしていいのか戸惑ってしまいますよね……
この記事では、「夫が妻の扶養に入る」という方法について、筆者が40代で退職した際の実体験にもとづき、手続きの流れや注意点をわかりやすく解説しています。
ぜひ最後までご覧いただいて、失業中の個人負担削減にお役立てください。
夫が「妻の扶養に入る」ための基礎知識
今回の内容でお話しする「扶養」とは、
- 健康保険の扶養家族
- 国民年金の第3号被保険者
上記の2つのことを指しています。
夫が会社員を退職する場合は、それまで会社で加入していた健康保険と厚生年金保険について、切り替える手続きが必要です。
しかし所定の要件を満たす場合は、「妻の扶養に入る」手続きを行うことで、夫の健康保険と国民年金の保険料支払いを無くすことができます。
なお、退職や転職時の健康保険の手続きに関しては、別の記事で解説していますので、詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
配偶者の扶養に入るための要件とは?
夫が「妻(配偶者)の扶養に入る」ための要件は、以下のとおりとなります。
- 配偶者が勤務先で「厚生年金保険」「社会保険」に加入していること
- 自身の収入見込みが年収130万円未満かつ配偶者の収入の1/2未満であること(前年の収入で判断する税金とは異なり、これから先の見込み収入で判断します)
考え方としては、会社員である夫の扶養に入って、妻が専業主婦をしている場合と同じです。
妻が働いていて、勤務先で厚生年金保険と社会保険に加入していれば、配偶者である夫が扶養に入ることができます。
夫が受けられる社会保険の給付は4つ
夫が妻の扶養に入る場合には、社会保険の1つである健康保険から、以下の4つの給付が受けられます。
- 家族療養費
- 高額療養費
- 家族埋葬料
- 高額介護合算療養費
夫は妻の扶養に入ることで、自身の健康保険料を支払うことなく、これらの給付を受けることができるのです。
家族療養費
病気や怪我によって、病院で保険診療を受けるときや薬局で保険調剤をしてもらうときに、支払うべき診療費・調剤費の負担が3割となります。
高額療養費
重い病気や怪我によって、長期入院が必要なときや、高額の診療が続いたときに、1ヶ月の医療費が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合は、超過分の金額が健康保険から返還されます。
最初から超過分を支払わなくて済む、限度額適用認定を受けることも可能です。
家族埋葬料
扶養に入っている夫が亡くなった場合に、埋葬を行う人に埋葬料または埋葬費(上限5万円)が支給されます。
※夫を扶養している妻が亡くなった場合にも、埋葬費(上限5万円)が支給されます。
高額介護合算療養費
8月1日から7月31日までの1年間で、かかった医療保険と介護保険の自己負担額が基準額を超えた場合に、超過分金額が支給されます。
扶養の範囲における収入の「2つの壁」とは?
妻の扶養に入る場合には、
上記のような、収入に関する2つの注意点があります。
ここでは、年収の「2つの壁」について確認していきましょう。
年収130万円の壁とは
夫が妻の扶養に入るためには、前述したとおり、
という要件を満たしている必要があります。
この「年収が130万円未満」という収入要件が、「年収130万円の壁」と呼ばれるものです。
- 妻と同居している場合:
夫の収入が年収130万円未満で、妻の収入の1/2未満であること - 妻と別居している場合:
夫の収入が年収130万円未満で、かつ妻からの仕送り額より少ないこと
- 60歳以上の場合や障害をお持ちの方は、年収要件が130万円から180万円に引き上がります
年収130万円未満というのは、12ヶ月で割って月収に換算すると108,333円となります。
アルバイトなどをするときに注意するべきなのは、
月収で108,333円を超えないようにする
ということです。
月収が108,334円を超えた場合には、妻の扶養から外されてしまう可能性があります。
なお、この月収にはアルバイトなどで働いた分の時給のほかに、交通費支給分なども含めた総収入で計算されますので、注意してください。
妻が加入している社会保険の保険者(協会けんぽ・健康保険組合)によっては、
- 1ヶ月でも月収108,333円を超えたら即扶養から外れる
- 2~3ヶ月の平均で月収108,333円を超えなければ、扶養のままでいられる
上記のように取り扱いが異なります。
1ヶ月くらい超えても、黙っていればバレないのでは?
このように思う方もいるかもしれませんが、その考えは危険です。
社会保険における被扶養者の状況確認は、毎年11月頃から行われています。
そこで扶養の条件から外れていることが発覚した場合は、遡って自身で社会保険に加入する必要が出てきますので、非常に面倒な手続きが必要になるのです。
月収が108,333円を超えなければ、年収130万円の壁はクリアできますので、
という点に注意しておきましょう。
年収106万円の壁とは
かりに妻の扶養に入っていたとしても、以下の4点すべてに当てはまる場合には、扶養から外れてアルバイト先の社会保険に加入する必要があります。
- アルバイトなどをしている会社が従業員数101人以上の大企業(※)
- 週20時間以上勤務
- 月収88,000円以上
- 勤務期間の見込みが1年以上
- 従業員数が”101人以上”という要件については、令和4年10月に“501人以上”から変更になりました
この年収・収入要件のことを「年収106万円の壁」といいます。
妻の扶養に入るための年収130万円の壁をクリアしていても、アルバイトなどの勤務先の会社規模・雇用条件によっては、
妻の扶養から外れることになってしまった…
上記のような可能性もあるので、妻の扶養に入りながらアルバイトなどをする場合は、年収106万円の壁にも注意が必要です。
夫が妻の扶養に入る場合、どんなメリットとデメリットがある?
夫が妻の扶養に入る場合のメリットとデメリットについて、どのようなものがあるのか確認してみましょう。
妻の扶養に入るメリット
夫が妻の扶養に入るメリットは以下のとおりです。
- 夫は国民年金の第3号被保険者になるので、保険料支払いが不要になる(保険料の支払いは無いですが、基礎年金の受給資格は保たれます)
- 夫は妻の社会保険に扶養家族として加入するので、保険料支払いが不要になる(医療費自己負担は会社員時代と同じ3割負担)
年金については、厚生年金から国民年金に切り替わりするものの、
保険料の支払いなく受給資格を得ることができる
というのはメリットでしょう。
健康保険に関しては、自身が社会保険に加入していた時と同じく、医療費の自己負担は3割です。
妻の社会保険の扶養家族となるので、保険料の支払いは不要となります。
このように、メリットは非常に大きいものとなりますが、夫が扶養に入ることで、妻の保険料負担が増額されるなどの措置は一切ありません。
妻の扶養に入るデメリット
夫が妻の扶養に入る場合のデメリットは以下となります。
- 夫が収入を大きく稼ぐことができない(見込み年収が130万円以上か、妻の収入の1/2以上で扶養から外れてしまう)
- 世間体が気になる、男のプライドが許さないというケースも…
妻の扶養に入っている場合は、主婦がパートなどで働くケースと同じで、「扶養の範囲内で働く」という形となります。
失業中にアルバイトをする場合は注意が必要ですが、会社員として入社が叶えば扶養から外れればいいだけなので、とくに問題はないでしょう。
世間体や男のプライドを気にする方もいるかもしれませんが、得られるメリットと比べるとささいなことでしかありません。
扶養に関する手続きについて
「妻の扶養」に関する、手続きについて確認していきましょう。
妻の扶養に加入する手続きの流れ
夫が妻の扶養に入る手続きは、妻の勤務先で行ってもらいます。
手続きのタイミングとしては、
自身の退職日の翌日に、妻の扶養に入る
上記がベストといえますので、事前に妻へ相談をしておきましょう。
会社によっては、夫が妻の扶養に入る場合の要件が設定されている場合や、必要な書類が違なる場合があります。
妻の扶養に入るための申請に何が必要なのか、事前に確認しておくのがオススメです。
ちなみに筆者の場合は、妻の会社に私の退職日を知らせるだけで、手続きをしてもらえました
失業保険の受給期間は注意が必要
失業保険(失業給付)の受給手続きをする場合は、注意が必要です。
失業保険で支給される基本手当日額が3,612円以上の場合は、
見込み年収が130万円以上である
とみなされるため、失業保険の受給期間は扶養から外れる手続きが必要となります。
失業保険の手続きに関しては、以下の記事でご説明していますので、詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
妻の扶養から外れる場合の手続きの流れ
失業保険の受給で妻の扶養から外れる場合は、失業保険が支給開始される前日づけで、妻の扶養から外れる「資格喪失手続き」を、妻の会社に行ってもらう必要があります。
失業保険が支給開始される日にちを、事前に妻へ伝えて、手続きを依頼しておきましょう。
妻の扶養から外れた後は、国民健康保険(国保)と国民年金への切り替え手続きが必要となります。
こちらは役所の健康保険と年金の窓口に、自身が行って手続きしましょう。
- 運転免許証などの身分証明
- 印鑑
- 健康保険資格喪失証明書
社会保険や年金の切り替え手続きに関しては、以下の記事でご説明していますので、詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
健康保険資格喪失証明書とは?
「健康保険資格喪失証明書」とは、妻の社会保険から外れて、国民健康保険に加入する際に必要となる書類です。
妻の会社に依頼すれば、通常は発行してもらえるものですが、発行を断られる場合も…
もし妻の会社で発行してもらえない場合は、自分で年金事務所に行って、手続きをして発行してもらいましょう。
「健康保険資格喪失証明書」の発行申請に必要な書類などは、以下で詳細をご確認いただけます。
書類発行には、申請手続きしてから1時間くらいかかるでご注意を!
失業保険の受給が終了した後はどうなる?
失業保険の受給期間が終了した後も、
まだ働けていないので収入がない…
という場合は、もういちど扶養に入る手続きをおこないましょう。
妻の扶養に再び入る場合は、最初のときと同じように、妻の会社に手続きを依頼する形となります。
まとめ:妻の扶養に入れる条件を満たしているのなら迷う必要なし!
今回は、「夫が妻の扶養に入る」という選択について、その要件や手続き方法などについて、筆者の実体験に基づいてお話ししました。
妻が働いていて、「妻の扶養に入る」条件を満たしているのなら、妻の扶養に入ることで、失業期間中の費用負担を軽減することができます。
転職活動が長引いてしまうと、貯金を食いつぶす生活になってしまう場合もあるもの。
妻の扶養に入ることで、健康保険や年金の負担が無くなるのであれば、心の余裕もかなり違ってくるでしょう。
じっくり仕事探しをすることができますし、扶養の範囲内でアルバイトなどをすることもできます。
なにも迷うことはありません。
しばらくお世話になります!
と奥さまに頭を下げて、妻の扶養に入ることをおすすめします。
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