オーナー企業への転職はヤバい?入社して分かった特徴と見分け方とは
今までの職場と異なる転職先として、
中小企業へ転職したい!
と考えている人もいるでしょう。
筆者も中小企業への転職を経験していますが、よかったことも「失敗した」と思ったこともあります。
なかでもオーナー企業は、ちょっとクセがあることが多いので、その企業の社風に合わないと、なかなかうまくいかないかもしれません……
どういった特徴があるのか、気になりますよね。
そこでこの記事では、オーナー企業への転職を考えている方に向けて、オーナー企業の特徴や働くメリット、転職する際に押さえたいポイントなどを解説しています。
筆者がオーナー企業で働いた体験談にもとづいて、わかりやすくお話ししていますので、ぜひ参考にしてください。
オーナー企業とはどんな会社なのか?
オーナー企業とは、創業者やその家族が株主であり、なおかつ社長や役員である中小企業のことを指します。
雇われ社長ではなく、「会社そのものを社長が持っている」ということです。
同族経営やファミリービジネスと言われることもありますが、同族経営というくくりでは、トヨタ自動車やパナソニック、サントリーなども同族経営となります。
同族経営(どうぞくけいえい)とは、特定の親族などが支配・経営する組織のことを指す。
家族経営(ファミリービジネス)オーナー系企業およびファミリー企業などとも称す。
日本の法人税法では、上位3株主の持ち株比率をあわせて50 %を超える会社を「同族会社」と定義する。この定義によれば、株式の需要が低い中小企業の多くや、買収防衛策として経営者が株式の大部を確保している一部大企業も同族会社に該当することになる。
出典:Wikipedia
範囲が広くなりすぎると傾向がわかりにくいので、この記事では、オーナー社長が経営する中小企業のことを、「オーナー企業」としてお話しします。
オーナー企業にありがちな特徴とは
オーナー企業には、どのような特徴があるのでしょうか?
筆者が実際に働いた経験をもとに、ありがちな特徴についてまとめてみました。
経営者と社員の距離が近い
オーナー企業のいちばんの特徴として、
経営者(社長)と社員の距離が近い
ということです。
オーナー企業に転職するまで、自分が働く会社の社長と話をするという機会は、筆者はほとんど経験がありませんでした。
大企業ばかりに勤務していたわけではないのですが、社長とは一般社員とは別のフロア(社長室など)にいる人だったのです。
ですから、普段はいるのかいないのかすら、気にしたこともありませんでした。
しかしオーナー企業の場合は、社長室にいたとしても同じフロアにあって、
- いつも社員を見渡していたりする
- ちょくちょく会議に顔を出す
- フロアをうろうろしたりする
上記のように、物理的にも心理的にも近い距離となります。
筆者の場合は、社長が近い距離にいることに、なかなか慣れることができませんでした。
社長の意志は絶対
会社というのは多かれ少なかれ、「社長の方針=会社の方針」ではあります。
ただ、オーナー企業の場合は、それがとくに顕著です。
「社長の意志が絶対」といっても過言ではありません。
たとえノルマを達成していても、部長に可愛がられていても、社長の評価を得られなければ、昇進も昇給も期待できないのです。
社長のイズムと合わなければ、その会社には居づらくなります。
また、社長に気に入られなければ、解雇すらもありえます。
そんなに簡単に解雇なんかされるものなの?
このようにお考えの方もいるかもしれませんが、オーナー企業では実に簡単に、社員の解雇がまかり通っているのです。
大企業であれば、
社長の方針は間違ってるよな…
という話を同僚としたとしても、社長の耳に入ることはまずありえません。
しかしオーナー企業では、
- 社長が聞き耳を立てている
- 誰かが社長にチクる
このようなリスクがあり、すぐに社長の耳に入ってしまうので、グチひとつこぼすのにも気を使います。
社内で社長批判するということは、あってはならないことなのです。
家族役員のひとことであっという間に物事が決まる
例えば部内で会議の結果で、
○○のための予算を確保する
という方針が決まったとしましょう。
当然ながらその予算に対して、売上目標や営業戦略を立てて説明するのですが、社長の許可が下りないことが多々あります。
オーナー企業は、お金を払うことには異常なまでにシビアなのです。
ところがある日、息子である専務が思いつきで、
販促用の○○を買うから。予算は100万円
このよう発言をすると、その意見はすぐに通ってしまいます。
にわかに信じがたいかもしれませんが、このような家族に甘い対応を目の当たりにしたときは、筆者もさすがにびっくりしました……
役員は全員家族か親戚なので、役員の起案に反対する人は誰もいません。
オーナー企業というのは、企業の体をなしてはいますが、
ただの家族経営なんだなあ…
と痛感することも多かったです。
基本的にトップダウンなので、
下からの声が、非常に反映されにくい体質である
といえるでしょう。
オーナー企業で働くメリットとは
ではオーナー企業のメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。
意思決定が早い
オーナー企業にも、いいところがないわけではありません。
それはなによりも、「意思決定が早い」ということです。
とにかく社長がOKすれば話が進むので、
- 部長がいないからハンコがもらえない
- 部内の調整が取れないので、いったん保留になった…
このようなケースは少ないでしょう。
「即決力」という点では、大企業よりも優れているところもあります。
社長と渡り合えれば、自分の思った仕事が可能
社長に認められて、五分で渡り合える力があれば、自分の思ったような仕事ができる可能性があります。
たとえば、会社の売上をあげるために、
新製品を開発しましょう!
別の販売ルートを開拓しましょう!
上記のような、会社を儲けさせるための提案であれば、フレキシブルに仕事の幅を広げられる場合も……
大企業だと組織が大きいですから、前例に従うことがほとんどでしょう。
しかしオーナー企業の場合は、小回りが利きますから、
自分の腕しだいで新しい仕事を始められる
というケースもあるのです。
オーナー企業で働くデメリットとは
オーナー企業に入社するには、それなりの覚悟も必要です。
もともと大企業に勤務していた人だと、考えられないようなことが、当たり前のように行われていたりします。
理不尽なことでも耐える覚悟が必要
オーナー企業というのは、企業の論理というよりも、オーナー経営者の論理で動いています。
企業の意思 = オーナー経営者の意思
上記の構図ですから、当然といえば当然です。
それなりの企業であれば、会社の方針というのは経営陣などのコンセンサスを取りながら、決定されたりするものでしょう。
しかしオーナー企業では、社長の独断で方針が決定します。
ですから、オーナー企業では社長の思いつきで、朝令暮改(朝言われたことが夕方に変わる)が当たり前のように起こります。
人事の評価も、社長が気に入っているかいないかで大きく変わるのです。
オーナー企業に勤めたことがない人であれば、
こんな理不尽なことがまかり通るのか…
このように思ってしまうことが多いかもしれません。
それに耐える覚悟がない場合は、オーナー企業に入社するのは避けたほうがいいでしょう。
とくに40代であれば、今までの勤務先とどうしても比較してしまいがちなので、より理不尽さを感じてしまう可能性もあります。
会社の体を成していない場合もある
中小のオーナー企業は、形式上は会社になっていますが、
- 会社の体を成していない
このように感じることもよくありました。
筆者が転職したオーナー企業では、
- 始業10分前に着席を強要される
- 電話番の必要のある部署は全員でランチに出ず、電話番を残す。
- トイレ掃除は内勤の従業員が交代で行う
- 手当なしの早朝出勤、残業の強要
- 出張時、土日の宿泊を強要される
上記のような習慣があって驚きました。
少人数の会社なら、当たり前のこともあるのかもしれません。
しかし、筆者にとっては初めての体験だったので、
オーナー企業ってやっぱり違うものだな…
と洗礼を受けた感じがしたものです。
率直にいうと、中小のオーナー企業を、「普通の会社」だと思わないほうがよいのかもしれません。(笑)
そのくらいに考えておいたほうが、あとあと落胆することが少ないでしょう。
とにかくお金にはシビア
自分で起業して会社を経営しているわけですから、基本的には、
オーナー社長はわがままで、強引に物事を動かしていくタイプが多い
というのは間違いありません。
そのくらいでなければ、オーナー社長は務まらないのでしょう。
そしてオーナー企業はとにかくお金にはシビア。はっきり言うとケチですね。(笑)
オーナー社長には、「会社の金」という概念がありません。
全部が「俺の金」です。ですから、お金を出すことに関しては非常にうるさいです。
筆者があるオーナー企業に転職して間もなく、前の会社でも関わっていたクライアントへ、仕事で訪問したときのことです。
その会社は最寄駅から徒歩20分はかかるところだったので、以前と同じくタクシーを使っていきました。
すると経費精算のときに社長に呼びつけられ、
こんな距離でタクシーを使うなよ!
と怒られたことがあります。
また、競合品の調査で外出した際の交通費を清算したときには、
売りもしないのに、経費ばっかり使うね…
このような嫌味を言われました。(笑)
基本的に中小のオーナー企業は、役職が高くなっても年収が安い傾向にあります。
将来性のあるベンチャー企業でもない限りは、年収アップの転職を考えている方にはおすすめできません。
社長が辞めたら廃業となるリスクがある
オーナー企業といっても家族経営ばかりではありません。
ウチは社長以外は全員他人だよ
という会社もあります。
筆者の知人が、そういったオーナー企業に勤めていました。
その会社は、業界ではニッチでマニアックなものを取り扱っている企業で、売上も悪くなく、社長も良い方だったそうです。
しかし残念なことに、社長は高齢を理由に廃業してしまいました。
他者にその事業を譲ることも、社員に委ねることもなかったのです……
オーナー企業では、このような「社長が辞めたら終わり」というリスクもあります。
私が経験したオーナー企業の「あるある話」
筆者もオーナー企業で働くようになってから、これまでの会社では無かったようなできごとを、いろいろと体験しました。
ここでは、オーナー企業の特徴としてわかりやすい、「あるある話」をご紹介します。
タイムカードがあった
オーナー企業に転職していちばん驚いたことは、タイムカードがあったことです。
サラリーマンとして20年以上働いていましたが、
用紙を機械に入れて、ガチャンとやるタイムカード
このタイプのものを見たのは初めてでした……
それまではタイムカードが制度としてあったとしても、パソコンで勤務時間や残業時間を管理するのが普通だったので、
昭和にタイムスリップしたようだ…
転職した当初は、このように思ったものです。(笑)
しかも、タイムカードがあるのに残業手当はつかないですし、そのくせ強制残業はあるという意味不明さでした。
退社時に社長に必ずあいさつ
上司にあいさつしてから帰るのは普通のことですよね。
しかし、筆者が転職したオーナー企業では、退社前に必ず社長室に寄って、社長にあいさつして帰らなければなりませんでした。
とくに何かミスをした後だったり、社長のご機嫌が悪いときだと、
お先に失礼します
と挨拶するだけは済まずに、30分くらいお説教が待っていることがあるのです。
当然ながら残業代もつかないですし、わざわざ挨拶に行ったのに、お説教に付き合わされるなんて意味が分かりませんよね……
社長とそりが合わなければ、その会社では終わる
筆者は社長の直属で、新しい事業の立ち上げを任された経験があります。
しかし、社長にどんな提案をしても、受け入れられませんでした。
社長なりのおぼろげな構想があったのですが、業界の常識からいうと、社長の構想は理想というより、夢物語に近いものだったのです。
ですから、やんわりと無理であることを伝えて、別の方法をいくつか提案していました。
しかし社長のお眼鏡にはかなわず、さらに社長は筆者のことを、
コイツは使えないな…
このように判断していたようです。
社長から「使えないヤツ」判定をされてしまうと、その会社で表舞台に立てる可能性は無くなります。
中小企業は基本的に少人数ですから、
社長と社員の関係というよりも、最終的には個人と個人のぶつかり合いだな…
ということを痛感しました。
オーナー企業への転職で押さえておきたいこと
筆者の場合は、オーナー企業への転職にあまりいい思い出がなく、どちらかというと否定的な文章が多くなっているかもしれません。
しかし、オーナー企業へ転職することを、すべて否定しているわけではないのです。
オーナー企業であっても、
- 社長のワンマン経営が度を超えていない
- 家族経営の色が薄い企業である
この2点を満たしている企業であれば、オーナー企業のデメリットとなる要素がなくなり、転職のリスクを減らすことができるでしょう。
ここでは、オーナー企業への転職を考えるうえで、押さえておきたいことをご紹介します。
オーナー企業への転職が向いている人とは?
オーナー企業で働くことで、
- 意思決定が早い
- より経営に近い目線で仕事ができる
上記のような環境に身を置くことができます。
将来的に起業を目指している人などであれば、転職するメリットは十分にあるはずです。
ただし、オーナー企業でうまく立ち回っていくのは、誰にでもできることではありません。
筆者の経験からいうと、オーナー企業に向いているのは、以下のような特徴がある方です。
- 家族的、個人的な人間関係が得意である
- どんな職場でも仕事は仕事、と割り切れる
- 大企業の体質が苦手である(one of themでは物足りない)
- 我の強い経営者と対等に渡り合える
- 過去の会社と比較しない覚悟がある
- 転職経験が少なく、過去との比較をしない
- オーナー企業での経験値を積んでおり、理解している
こういった特徴に当てはまっているのであれば、オーナー企業への転職を、前向きに考えてみるのもよいでしょう。
オーナー企業の見分け方
オーナー企業とひと口で言っても、数百人を抱える企業から少人数の企業まで、その規模は様々です。
ですから実際には、オーナー企業を見分けるというのは難しいことかもしれません。
そんななかで、オーナー企業を見分けるうえでのヒントをご紹介します。
役員に同じ苗字の人が多くないか?
中小のオーナー企業は、同族経営、または家族経営であることが多いのが特徴です。
ですので、いちばん簡単な見分け方は、
役員に同じ苗字の人が多いかどうか?
ということでしょう。
家族経営の会社では、社長がいて、奥さんが副社長、息子が専務や常務などの役員、ということがありがちです。
ただし、社長と役員が夫婦の場合は、あえて別姓を名乗っているケースもありますので、見抜けない場合もあります。
会社に出社してこない役員がいる
また、これはあくまで筆者の体験ですが、オーナー企業では、
会社で見たことがない役員がいる
ということがあったりします。
これは経営対策のひとつだと思われますが、役員として名を連ねているのに、オフィスで一度も見たことがない役員がいたのです。
古株の社員にこっそり聞いてみたところ、
ああ、その人は社長の親族だよ
という話でした。
ただし、こればっかりは入社してみないとわからないかもしれません。
面接官が社長のことを異常なほど気にしている
見分ける方法として、もうひとつヒントになるのは、
面接のときに、面接官や管理職が社長のことを、異常なほど気にしている
という場合です。
オーナー企業では社長との距離感が近く、また社長の動向がすべてを決定するので、こういった特徴が発生します。
社長は○○みたいな人物が好きなんですよ
ウチの社長はこういうことが嫌いでして…
上記のような発言を、面接のときに連発するようであれば、かなりワンマンなオーナー社長だと疑ったほうがよいかもしれません。
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まとめ:オーナー企業では「会社は社長のもの」
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