転職時に離職票は必要?判断基準と手続き方法、よくある疑問を解説
はじめて転職する人などは、離職票と聞いても今ひとつピンとこないですよね。
退職時には、いろんな書類を渡されるから大変です。
そこでこの記事では、転職時における離職票の必要性や役割、必要な場合の発行手続きについてご説明していきます。
筆者はかつて法務部・人事部に在籍し、社員や派遣スタッフの退職に関して、さまざまな相談を受けてきました。
この記事を読み終えることで、離職票の役割や必要性を理解して、転職時の書類提出についての不安を減らすことができますので、ぜひ最後までご覧ください。
離職票の役割と基礎知識
転職を経験したことがある方なら、会社から離職票を渡されたことがあるかもしれませんね。
離職票とは、いったいどのような役割のもので、誰が発行するのかはご存知ですか?
まずは、離職票の基本的な部分について確認しておきましょう。
離職票とは?
離職票とは、正式には「雇用保険被保険者離職票」といい、以下の2つの書式があります。
- 雇用保険被保険者離職票-1
- 雇用保険被保険者離職票-2
ほとんどの場合は、この1と2の書式をセットで取り扱うため、まとめて「離職票」と呼ばれています。
◆雇用保険被保険者離職票-1
◆雇用保険被保険者離職票-2
離職票とは、
会社を退職しても、まだ次の仕事が決まっていない
上記に該当する場合に、雇用保険の失業給付(失業保険)の申請を、ハローワークで行うときに提出する書類です。
したがって、すでに次の転職先が決まっており、
失業保険の申請はしないんだけど…
という人なら、離職票は必要のない書類となります。
すべての退職者が必要となる書類ではないため、退職先が必ず発行してくれるとは限りません。
離職票が必要な場合は、退職前に会社に発行を依頼しておきましょう。
退職から2週間ほどで、会社が発行してくれるはずです。
離職票は失業保険の申請に必要な書類です
退職後に失業給付(失業保険)の申請を行うときは、離職票は必須の書類となります。
失業給付とは、仕事を探している無収入の状態において、生活費を保障してくれる雇用保険の制度です。
雇用保険の「失業給付」とは一般名称で、正しくは「基本手当」といいます。
この基本手当の支給を受けるには、以下のどちらの条件もクリアしている必要があります。
- 失業の状態にある
- 離職した日以前の2年間に、雇用保険に加入していた期間が通算して12ヶ月以上ある
まずは離職票がないと申請自体が行なえませんので、転職先が決まっていない場合は、必ず退職する会社に離職票の発行を依頼しましょう。
失業保険の申請方法については、以下の記事で解説していますので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
離職票が発行されるまでの流れ
離職票は、退職する会社が発行手続きをして、退職者に渡す書類となっています。
離職票が発行されるまでの流れは、以下のとおりです。
- 退職後に、会社がハローワークへ「離職証明書」を提出
- ハローワークが離職票を交付
- 会社から退職者へ離職票を送付
労働者が会社を退職する場合は、雇用保険を脱退しますので、会社はハローワークに「資格喪失届」を提出しなければなりません。(退職の翌日から10日以内)
退職者から離職票の要望があった場合に、会社は「資格喪失届」とあわせて、「離職証明書」をハローワークに提出します。
そしてハローワークは、会社から「離職証明書」の提出があった場合に、離職票を交付する流れです。
このような流れとなるので、離職票が退職者の手元に届くまでに、退職からおおよそ2週間ほどかかります。
離職票と離職証明書、退職証明書の違いとは?
退職のときに使用するもので、名称が似ているために紛らわしい3つの書類があります。
ここでは、それぞれの違いと役割についてご紹介します。
離職票とは
失業保険を受けるために、ハローワークに提出する公文書です。
ハローワークが発行し、退職する会社を通して、本人に交付されます。
離職証明書とは
正式には「雇用保険被保険者離職証明書」といい、社員が退職し離職票を発行する場合に、会社がハローワークに提出する公文書です。
社員は退職前に、離職証明書に記載された離職理由などの内容を確認し、記名押印または署名をします。
書類の作成やハローワークへの提出は、すべて会社が行います。
退職証明書とは
退職証明書は、転職先の会社が提出するように指示をした場合に必要となる書類です。
会社を退職した事実や、働いていた期間などを証明します。
退職証明書は会社が発行する私文書で、とくに決められた書式はなく、退職者が希望する場合のみ発行されます。
労働基準法の第22条では、労働者が退職する場合に、以下の項目のうち労働者が請求した項目に関する証明書を、会社側が発行する必要があると定められています。
- 使用期間
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由
まれに転職先の会社で、離職票の提出を指示されることがありますが、これは退職した会社の在籍などを確認するためのものです。
退職証明書については、以下の記事で解説していますので、詳しく知り合い方はこちらをご覧ください。
雇用保険被保険者離職票-1と2の違いと書き方
離職票には「雇用保険被保険者離職票-1」「雇用保険被保険者離職票-2」の2つの書式があります。
ここでは、それぞれの役割と記入する方法についてご紹介します。
離職票-1の記入方法と確認項目
雇用保険被保険者離職票-1は、A4サイズの下段が少し切り取られた大きさの書式です。
◆雇用保険被保険者離職票-1
離職票1で私たちが記入する個所は、
- 「6. 個人番号」
- 「求職者給付等払渡希望金融機関指定届の払渡金融機関」
この2つの項目となります。
「6. 個人番号」については、ハローワークに行ってから本人が記入してください。
「求職者給付等払渡希望金融機関指定届の払渡金融機関」の欄については、失業保険の基本手当を振り込んでもらう、金融機関の情報を記入しましょう。
「金融機関による確認印」欄がありますが、ハローワークに銀行の通帳やキャッシュカードを持参すれば、空欄のままでも問題ありません。
離職票-2の記入方法と確認項目
雇用保険被保険者離職票-2は、A3サイズの書式で、毎月の給与額や具体的な退職理由などが記載されます。
◆雇用保険被保険者離職票-2
こちらに記載されている金額や離職理由によって、失業保険で支給される金額が変わってきます。
内容に間違いないか、しっかり確認しておきましょう。
離職票-2で記入および確認する項目は、以下の4点です。
- 離職理由の離職者記入欄
- 具体的事情記載欄(離職者用)
- 離職者本人の判断
- 記名・押印または自筆署名
ひとつずつ詳しくご説明します。
1.離職理由の離職者記入欄
離職理由が該当する項目に○を付けましょう。
左隣には、会社側が回答した離職理由に○が入っていますが、自分の離職理由をしっかりと確認してから、該当する欄に○をするようにしてください。
2.具体的事情記載欄(離職者用)
1つ上の欄にある「具体的事情記載欄(事業主用)」に記載されている離職理由を確認し、自身の認識と相違なければ「同上」と記入します。
自分から退職を申し出た場合は「自己都合による退職」、倒産や解雇の場合は「会社都合による退職」と記載されているはずです。
離職理由が事実と違う場合は、本来の離職理由を記入しましょう。
例えば、「自己都合による退職」と会社は記載しているが、
実際は解雇なんだけど…
という場合には、「会社都合による解雇」と記入してください。
3.離職者本人の判断
事業主が〇をつけた離職理由に対する、異議の「有り」「無し」を記入します。
1・2番目の項目と合わせて、転職理由が合っていれば「無し」に、違う場合は「有り」に〇を付けましょう。
4.記名・押印または自筆署名
自分で記入した項目を確認し、間違いがなければ、記名・押印または自筆署名をします。
どうしても記入方法や確認内容が分からない場合は、ハローワークに確認してください。
転職するときに離職票は必要なもの?
退職するときに会社から、
離職票は必要ですか?
上記のように聞かれたけれど、よくわからなくて、
どんなときに必要になるんですか?
思わずこんなふうに逆質問してしまう方も多いようです。
離職票の役割がよくわかっていないと、自分に必要なのかどうかは判断がつきませんよね。
まずは転職するときに離職票は必要なものなのか、そして転職先に提出する書類にはどのようなものがあるのか、確認しておきましょう。
転職先に提出が必要になるのは、雇用保険被保険者証と年金手帳
転職先に必ず提出する書類は、「雇用保険被保険者証」と「年金手帳」です。
入社日に持参できるよう、退職前に2つの書類が揃っているか確認しておきましょう。
雇用保険被保険者証とは?
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入するために必要となる書類で、あなたの雇用保険の被保険者番号が記載されています。
◆雇用保険被保険者証
被保険者番号は、会社を辞めても原則変わりません。
ですから、あなたの番号を確認するために、転職先で雇用保険被保険者証が必要となるのです。
年金手帳とは?
年金手帳とは、転職先の厚生年金に加入するときに必要となる書類です。
◆年金手帳(イメージ)
どちらの書類も、入社時に本人に返却することになっていますが、会社で保管していて、退職時に本人へ返却するケースもあります。
手元にない場合は、会社に確認してみましょう。
紛失した場合はどうする?
万が一、紛失してしまった場合には、以下の方法で早めに再発行の依頼をしてください。
- 雇用保険被保険者証:
ハローワークにて無料で当日に再発行 - 年金手帳:
年金事務所で無料で再発行。後日郵送されてくるが、時期によっては1ヶ月ほどかかることも…
雇用保険被保険者証の再発行申請手続きについては、以下の記事をご参照ください。
離職票が必要かどうかの判断基準とは
原則として、離職票を転職先に提出する必要はありません。
ですので、退職するときに次の転職先が決まっていて、失業保険を受給する予定が無いのであれば、退職する会社に離職票を発行してもらう必要はないです。
離職票が必要になるかどうかは、
失業保険を受給する可能性があるかどうか?
上記で判断できます。
以下に当てはまる人は、失業保険をもらう場合のことも考慮して、離職票をもらっておきましょう。
- 会社を退職したが、次の勤務先が決まっていない人
- 会社を退職し、転職先は決まっているが、転職先で長く勤められるか不安な人
- 勤務先・転職先の経営状況が不安な人
- 持病をお持ちの方
転職先から求められたら、離職票は提出するべき?
離職票とは、本来は失業給付の申請を行うための書類ですから、転職先に提出する義務はありません。
また離職票-2には、離職理由が記載されていますので、
あまり見られたくない書類だな…
このような気持ちもあるでしょう。
だからといって、転職先から提出を求められたら、拒否もしづらいものですよね。
転職先から求められた場合は、以下のように話してみましょう。
退職前にこちら(転職先)が決まっていたので、離職票は発行してもらっていません
通常であれば、「それなら不要」という話になるはずです。
ただ、上記のように話しても、
それなら退職先に発行を依頼してください
このように言われてしまう場合には、素直に従ったほうがよいでしょう。
こんなところで反抗して、入社して早々に働きづらくなるのは避けておくべきです。
使わなかった場合は、離職票は捨てていいの?
転職先は決まっているけれども、
念のため退職先から離職票をもらっていたんだけど…
このような場合は、結局は使わなかったとしても、「2年間」は離職票を大切に保管しておきましょう。
失業保険の受給要件は、
退職前の2年間で、通算12ヶ月以上は雇用保険に加入していること
上記のように定められています。
仮に短い期間で転職先を辞めてしまっても、通算期間を満たせば、失業保険は受給できるのです。
転職先で長く就業できれば必要ありませんが、万が一という場合もあります。
持っておいて損することはありませんので、2年間は大事に保管しておきましょう。
転職先が決まっている場合でも、離職票はもらっておこう
本来は転職先が決まっていれば、会社に離職票を発行してもらう必要はありません。
転職先が決まっていれば、失業保険の申請を行わないからです。
ですから、いまの会社を退職したあとに、
辞めたあとは会社勤めをする意思はありません
転職後に失業状態になる可能性は無いです
上記のような人であれば、離職票がなくても困ることはないでしょう。
ただ、たとえ転職先が決まっている場合でも、
万が一を考えて、離職票を発行しておく
ということを筆者はおすすめしています。
辞めるときには要らないと思っていても、
- 転職先から離職票の提出を求められる場合がある
- 転職先の内定が取り消しされたり、すぐ辞めてしまった場合は、失業保険の申請で必要になる
上記のような理由で、あとから必要となる可能性もあるのです。
転職先をすぐ辞めてしまったから、失業保険の申請はできないんじゃないの?
このように思われる方もいるかもしれませんね。
しかし「離職票は失業保険の申請に必要な書類です」に記載した、条件②を見てもらうとわかるとおり、
離職した日以前の2年間に、雇用保険に加入していた期間が通算して12ヶ月以上ある
上記の条件を満たしていれば、失業保険の申請は可能です。
たとえばA社を退職して、B社に入社したとしましょう。
ここで理由があってB社を3日で退職したとしても、A社で12ヶ月以上働いていれば通算されますから、受給資格はあるということです。
しかし退職するときに、
転職先が決まっているので、離職票は必要ないです
このような話しをしていると、あとから離職票の発行依頼をする際に、連絡がしづらくなってしまうかもしれません…
もしもの場合に備えて、
転職先から提出するように言われたので…
このように言っておいて、離職票を発行してもらっておけば、すぐに失業保険の申請ができます。
無事に転職先で仕事を続けられて、離職票が不要だったとしても、自分で保管しておけばいいだけです。
離職票が手元にあったほうが何かと便利なので、可能であれば、退職前に離職票の発行を依頼しておきましょう。
離職票が必要だけど、持っていない場合はどうすればよい?
離職票を発行するのは退職する会社とわかりましたが、必要な場合はどうすれば、発行してもらえるのでしょうか?
ここでは、離職票が必要な場合の発行手続きの方法や、届かない場合の対処法をご紹介します。
離職票が必要な場合の発行手続きの流れ
前述したとおり、離職票は退職時に必要な場合と不要な場合がありますので、退職時に会社が必ず準備してくれる書類ではありません。
退職時に転職先が決まっておらず、
失業保険を申請する可能性がある…
というときは、必ず会社の総務や人事部などに発行依頼を行いましょう。
離職票を発行するときは、以下のような流れとなります。
- 本人が会社に離職票の発行を依頼する
- 会社の担当者が離職証明書を作成して、本人は確認の署名をする
- 会社の担当者が離職証明書をハローワークに提出する
- ハローワークが離職票を発行する
- 会社の担当者が、発行された離職票を本人へ郵送する
発行手続きには時間を要しますので、余裕をもって退職の2〜3週間前までに、会社の担当者へ離職票の発行を依頼しておくようにしましょう。
退職した会社から離職票が届かないときは?
退職後10日以内に、会社がハローワークに申請することで、離職票が交付されます。
したがって、通常は2週間ほどで、遅くとも1ヶ月以内には、離職票は退職者の手元に届くはずです。
1ヶ月経っても離職票が届かないような場合は、会社が離職票の発行をしていない可能性があります。
前述したとおり、離職票とは退職時に必ず渡される書類ではなく、退職者が希望した場合のみ発行される書類です。
離職票が届かない場合は、
- あなたの希望が会社側に伝わっていない
- 会社側が忘れてしまっている
上記のどちらかでしょう。
どちらにしても、離職票が届かないと失業保険の申請ができません。
すぐに退職した会社に連絡して、
離職票を発行してもらえますか?
このように依頼しましょう。
もしそれでも会社が離職票を発行してくれない場合は、ハローワークに相談することをおすすめします。
会社から離職票が交付されない場合や、事業主が行方不明の場合等については、住居地を管轄するハローワークにお問い合わせください。
出典:雇用保険の具体的な手続き|ハローワークインターネットサービス
まとめ:失業保険を使う予定がなくても、離職票は発行してもらおう
今回は、転職時における離職票の必要性や役割、必要な場合の発行手続きについてお話ししました。
離職票とは、失業保険の申請時に必要となる書類なので、転職先が決まっているときは、基本的に不要な書類です。
ただし、記事のなかでご紹介したように、
- 予期せず転職先から内定が取り消しになった
- 転職先をすぐに辞めてしまった
このような事態になってしまって、失業保険を使うことになった際に、離職票が必要となります。
あとからだと、退職先にも連絡しづらくなりますし、失業保険を申請するまでに、時間がかかってしまうことになりかねません。
万が一に備えて、転職先が決まっていても、離職票は必ずもらっておきましょう。
セカンドゴングは40代の転職を応援しています!
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