面接や職務経歴書などで、前職を退職した理由として、キャリアアップ志向を挙げる人は多いでしょう。
キャリアアップを理由とすることで、
上記のように、ポジティブに評価してもらえる可能性が高まります。
しかし、自分の考えをしっかりまとめておかないと、
このように、ネガティブに受け止められる可能性もあるので、注意が必要です。
キャリアアップ志向を退職理由のなかで伝える場合は、以下の3つのポイントを押さえて整理しましょう。
- 自分の仕事や気持ちを整理して、ストーリー化する
- 自分のスキルや現在の状況を、客観的に評価する
- ネガティブな理由は、別の言い方に変える
今回の記事では、大学でキャリア教育に従事していた筆者が、
退職理由として、キャリアアップを効果的に伝える方法
上記について、具体的な回答例を用いながら解説します。
退職理由でキャリアアップ志向を伝えるメリットとは?
企業が転職者を受け入れる場合は、即戦力として活躍が期待でき、さらなる成長が望める人材を求めています。
退職理由をキャリアアップとすることで、
転職後にさらに成長できるという可能性
上記を印象づけることができるのです。
やる気や前向きさをアピールできる
退職理由を語るときに、
こういったことを言う場合と、
という場合では、印象はどのように変わるでしょうか?
ほとんどの場合では、キャリアアップを理由とした方が、
このように受け止められるでしょう。
「キャリアアップ」という言葉は、
やる気や向上心があることを、転職向けに言い直した表現
といえるのです。
転職後にさらなる成長が期待できる
キャリアアップを退職理由とした場合、転職後のさらなる成長を期待させることができるでしょう。
企業は転職人材に対して、自社でさらに成長してくれることを望んでいます。
社員が成長すれば、他の社員にいい影響を与えて、会社全体の成長につながるからです。
社内に成長の相乗効果を与えるキャリアアップは、転職先の企業にとっても、魅力的なパワーワードといえるでしょう。
キャリアアップを退職理由にするデメリット
このような表現を使うと、やる気が伝わる一方で
というふうに、ネガティブな方面に勘繰られる可能性があります。
不満が多いタイプだと思われる
キャリアアップのために退職する(した)という言い方は、
前の会社はキャリアアップの場ではなかった
このように言っているのとほぼ同じです。
面接官からすれば、
という捉え方をされる可能性があります。
同じ理由ですぐに辞めると思われる
キャリアアップで辞めるという人は、
上記のように、ネガティブに受け取られる場合もあります。
なぜならキャリアアップというものは、
会社が用意するものではなく、本人の気持ちによるところが大きい
このように考えている人が多いからです。
「前職でキャリアアップできなかった」と発言する人は、次の会社でも同じ理由で退職すると思われやすいでしょう。
退職理由でキャリアアップを伝えるための準備
キャリアアップを目指して退職したと伝える場合、まず注意しなければいけないのは、ネガティブな受け取られ方をしないようにすることです。
そのためは、キャリアアップに対する説明の仕方を、事前にしっかり固めておくことが大切となります。
客観的に自己分析をする
まずは、客観的に自分を分析することが、退職理由を効果的に説明するために重要です。
- 自分は前職でどのように成長できたのか?
- 自分は前職で何に行き詰まったのか?
自分自身について、「成長」と「行き詰まり」という、ふたつの視点から振り返りましょう。
そして、「行き詰まり」の原因はどこにあるのかを、
会社ではなく、自分自身の問題としてとらえる
このように考えることで、会社を否定することなく退職理由を説明できます。
転職先として選んだ理由を考える
次に、どうしてその会社を転職先として選んだのか、志望理由について考えましょう。
転職活動をするときは、複数の会社に応募することが一般的ですから、
という場合もあるでしょう。
仮にそうであっても、面接まで進んだ場合は、
前職での「行き詰まり」を打破するために、なぜこの会社に応募したのか?
上記についての道筋を説明することが大切です。
長期的なキャリアプランを考える
退職理由は、転職のタイミングだけに焦点を当てるのではなく、長期的なキャリアのなかで考えることが大切です。
- これまでの経験から、将来のキャリアについてどのような理想があるのか?
- キャリアの実現に向けて、どのように行動していくつもりなのか?
このふたつの視点から、これから10年ほど先を見据えて、キャリアプランを設計しましょう。
そのなかで、自分の成長と行き詰まりを位置づけると、前職を否定することなく退職理由を説明できます。
キャリアアップを退職理由にする場合の回答例【目的別】
それでは、キャリアアップを退職理由にする場合の、回答例を確認してみましょう。
目的別で例をご紹介していますので、ご自身に合うもの選んで、参考としてください。
1.責任ある仕事をしたい場合
こういったことを退職理由とするなら、前職の人間関係ではなく、会社の規模や組織の違いに焦点を当てることがポイントです。
私は〇〇株式会社にて5年間、広報業務を担当していました。
ウェブサイトの運用やSNSの発信など、幅広く広報活動に携わる機会をいただけましたので、業務を通じて、自分なりに試行錯誤しながら、成長できたと思います。
ただ、会社規模が大きいことから、私自身の意見やアイデアを上層部に伝える機会を十分に持てませんでした。
御社は社員の主体性を重視する社風があると伺い、入社を希望するに至りました。
上記の回答例では、責任ある仕事に携われなかった理由として、会社規模が大きかったことを挙げており、前職に対して一定の理解を示しています。
私は〇〇株式会社にて5年間、広報業務を担当していました。
ウェブサイトの運用やSNSの発信など、幅広く広報活動に携わるなかで、いろいろなアイデアが生まれました。
しかし私の上司は、自分の考えを押し通すタイプのため、部下の意見に耳を傾けることはありませんでした。
そこで、社員の主体性を重視する御社で働きたいと考えています。
こちらの回答例では、部署の人間関係を理由に挙げてしまっているため、単なる「悪口」になってしまうのです。
こういった表現をしてしまうと、
上記のように思われてしまう可能性があります。
2.異なる職種に就きたい場合
前職を辞めた理由として、仕事に行き詰まりを感じて、ジョブチェンジしたいという場合もあるでしょう。
ジョブチェンジを希望する場合は、
前の仕事を通じて、どのような思いが芽生えたのか?
ということを伝えるのがポイントです。
私は、〇〇株式会社にて事務職の仕事をしていました。
私は人と話したり、いろいろな場所に行ったりすることが大好きです。そのため、オフィスでパソコン業務をすることに苦痛を感じていました。
そこで私は、人と接する機会が多い営業職に就きたいと思うようになりました。
上記の回答例は、前職で関心の広がりがあったことが感じられるので、一見すると問題ないように思えます。
しかし、事務職のメインであるパソコン作業は、どの業種においても避けられません。
それを「苦痛だ!」「つまらない!」と言い切ってしまうと、面倒なことから逃げる我慢強くないタイプだと思われます。
私は、〇〇株式会社にて事務職の仕事をしていました。
営業担当者のサポートをする機会がたびたびあり、顧客開拓の難しさや厳しさを見てきました。
同時に、契約が成立したときには、達成感や喜びを共有してきました。
営業職は、実績が評価される厳しい世界です。しかし私は、仕事を長く続けていくうえでの魅力を感じています。
そこで、以前より興味があった〇〇を取り扱う御社にて、営業職に就くことを希望いたします。
この回答例のように、事務職としてどのように営業職を支えてきて、いかに関心が広がったかを説明することで、以前の仕事を否定することなく好印象となるのです。
3.高収入を目指したい場合
実際のところ、
という単純な理由で、転職活動を始める人も多いでしょう。
しかし、退職理由として収入面だけの話をしてしまうと、
前の会社は給料が安かった
このような不平不満を言っているだけのように聞こえます。
働くうえで収入面は大切なことですが、面接官によっては、「お金より大切なもの」を重視するタイプの人もいるのです。
給与を退職理由として挙げる場合は、
給与の低さに対する一定の理解を示すこと
上記がポイントとなります。
かりに前職の給与は不当に安く、残業代が出ないことが事実だったとしましょう。
私は、〇〇株式会社にて10年間、小売業に携わっておりました。小売業という業種柄、勤務時間が長く、土日出勤が当たり前でした。
しかしながら給料は安く、サービス残業することが当たり前でした。この先、同じ会社に勤めていても、給与アップは見込めないと感じています。
御社は、給与体系が整備されており、福利厚生も充実していると聞きました。そこで御社に入社することを希望するに至りました。
もしそうであっても、上記の回答例のように、給与アップだけを退職理由にしてしまうと、
といった疑問が生じてしまいます。
私は、〇〇株式会社にて10年間、小売業に携わっておりました。
お客様を第一に考え、お客様への対応、スタッフ管理、発注・売上管理などの仕事を任せていただけました。
しかし、他店との価格競争が進む現在、給与アップは見込めないと感じています。
これまでの接客経験を活かしながら、成長業界である人材派遣業界にて、御社の成長に貢献できるように仕事に取り組み、年収アップを目指したいと思っております。
上記の回答例のように、
- 業界の事情を客観的に捉える
- 前職で得たものを活かす
という2点をさりげなく盛り込むことで、面接官の印象を大きく変えることができます。
4.ブランクがある場合
リフレッシュ期間を設けたかった、やりたいことが見つからなかったなど、理由がはっきりしないブランクが生じることもあるでしょう。
キャリアアップと結びつけにくい内容だからこそ、回答に工夫を凝らす必要があります。
私は〇〇株式会社を退職したのち、前職と同じく接客業を中心に転職活動を行いました。
しかし、自分が本当に営業を続けていきたいのか、迷うようになりました。
そこで、転職活動を中断していたのですが、そのときに祖父の介護のサポートをする機会がありました。
介護施設のスタッフの仕事ぶりに触れるなかで、お客様に喜んでいただくためにはどのようなサービスが必要なのか、改めて考えました。
そして接客業でさらに成長することを決意し、御社へ応募するに至りました。
こちらの回答例では、以下の3点を退職後のブランク期間における学びとして、位置づけています。
- 転職活動が上手くいかなかったこと
- 介護スタッフの仕事ぶりに刺激を受けたこと
- 得た気づきを次の仕事に活かしたいこと
私は〇〇株式会社を退職してから、すぐに転職活動を開始しました。前職と同じように接客業を希望しましたが、上手くいきませんでした。
そこでいちど転職活動を中止して、自分を見つめなおす機会を持ちました。
その結果、私が本当にしたい仕事は接客であると改めて気づきました。
そこで私は、御社にて接客業に就くことを希望します。
一方で、上記の回答例では、ブランク期間に何があったのかが、面接官には全く伝わらないのです。
アルバイト、人との出会い、日々の生活、旅行など…どのようなかたちでも構いません。
ブランク期間を、「気づき」と「成長」の期間と位置づけましょう。
5.資格取得を目指している場合
ブランク期間に資格取得にチャレンジしていたのなら、たとえ不合格であっても、伝えるようにしましょう。
必須条件に資格が関わる場合をのぞいては、合否以上にチャレンジ精神が評価されるという場合が多いからです。
私は〇〇株式会社にて、中小企業の販路拡大を支援する業務を担当していました。
支援に携わるなか、中小企業を取り巻く多様な状況を知り、私自身がさらにスキルアップする必要性を感じました。
そこで前職を退職し、中小企業診断士の資格取得の勉強に専念しました。一度受検をしたものの、残念ながら合格するには至りませんでした。
継続して勉強をつづけながら、必ず合格して御社の業務に役立てていきます。
上記の回答例では、資格取得に向けて努力したこと、転職後も勉強を続けて、必ず合格することを伝えています。
私は〇〇株式会社にて、海外との取引先との連絡調整の業務を担当していました。
さらに英語コミュニケーションスキルを高めるために、TOEICスコア800を目指して勉強を開始しました。
ただ、前職は残業が多く、シフトが不安定でした。そのため勉強の時間を取ることができずに、目標スコアを達成できませんでした。
御社では、週休2日が約束されており、残業が少ないと伺っております。そこで資格取得の勉強と両立できると思い、応募するに至りました。
しかしこちらの回答例では、「勉強の時間がなかった」と、不合格の理由を前の職場に押し付けています。
さらに週休二日なので応募したという言い方は、
と言っているようなものです。
このような資格取得を退職理由として述べる場合は、
- 両立する努力をする
- 合格して仕事に役立てる
という2点を盛り込んで話すことがポイントとなります。
面接官にうまく回答するために押さえておきたいコツ
ここまで、キャリアアップのために退職した場合に、退職理由を面接でどのように説明すれば効果的なのか、いくつかのケースを取りあげて解説しました。
その内容をふまえて、キャリアアップを退職理由とするときに、うまく回答するためのコツをまとめると以下のとおりです。
ストーリーに一貫性を持たせる
退職する理由は、複数の状況が重なっていることが多いので、説明しにくいことも多々あるものです。
とくに面接では緊張することもあり、
上記のように、退職理由の説明が迷走しがちでしょう。
限られた時間で自分をアピールするためには、
転職活動のストーリーに、一貫性を持たせる
ということが大切です。
自分自身の葛藤や気持ちの変化などを紙に書き出して、現在に至るまでのストーリーを、整理しておくことをおすすめします。
ネガティブな理由は別の表現で言い換える
退職理由を整理するときは、まずは自分の正直な気持ちを書き出してみましょう。
- 休みが少なすぎる
- 給料が安すぎる
- 上司がひどすぎる
そのうえで、書き出した正直な気持ちを、別の表現に言い換えてみるのです。
例えば、休みが少ないのであれば、
このように言い換えるだけで、印象はぜんぜん違ってきます。
達成不可能な夢は言わない
キャリアアップを退職理由とする場合は、転職先でどのように成長するのかも、セットで説明することになります。
そのときに、自分を大きく見せるために、
絶対に達成できないことを伝えてしまう
ということは避けましょう。
若い人であれば、
このように、好意的に受け止められる場合があるかもしれません。
しかし、ある程度の年齢がいっている人が発言した場合は、
といったマイナス評価につながってしまいます。
自分の経験やスキルを踏まえて、
現実から離れすぎない程度に、将来の成長を語ること
というのがポイントです。
まとめ:キャリアアップの意思を効果的に伝えよう
今回は、前職の退職理由としてキャリアアップを取り上げる場合、面接で説明するときのポイントについて、具体的な回答例とともにご説明しました。
たとえキャリアアップという前向きな理由であっても、面接官の受け止め方によっては、前職に対する不満や悪口となってしまいます。
退職理由を整理する際は、以下の3つのポイントを念頭に置いて、考えてみましょう。
- 自分の仕事や気持ちを整理して、ストーリー化する
- 自分のスキルや現在の状況を、客観的に評価する
- ネガティブな理由は、別の言い方に変える
上記3点を意識するだけで、面接における印象が変わるだけではなく、自分自身の転職活動を振り返りできる機会にもなります。
面接を前にして、不安を感じていたり、転職活動の方向性が定まらない方は、ぜひ参考にしてみてください。
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