兵庫県神戸市にて、「しごと改革コンサルタント」として活動している山本 顕一です。
40代ともなれば、社会人経験も20年に達して、いろいろな意味で人としての「厚み」が出てくる年代でしょう。
ですから、自身の「強み(得意としていること)」について、しっかりと語ることができるという方も多いのかもしれませんね。
しかしその「強み」は、本当の意味で転職先で通用する、「他者と差別化された強み」になっていますか?
自分の「長所」を「強み」として語ってしまうようでは、転職先で通用するものとはいえません。
また、あなたの「弱み」については、どのような対応を取るべきか考えていますか?
こういった考えでは、転職に成功することは難しいかもしれません。
今回の記事では、転職活動をするにあたって、
- 自身の「強み」と「弱み」を分析することの重要性
- 「強み」と「弱み」を具体的に見つけ出す方法
上記について詳しく解説していきます。
「強み」と「長所」の違いとは
「強み」と似たようなもので「長所」があります。
このふたつは同じ意味に捉えられがちですが、実は明確に違うのです。
例えば、履歴書に書くことも多い「責任感がある」という特長。
この「責任感がある」というのは、「強み」でしょうか。「長所」でしょうか?
答えを導くには、置かれる立場に立って考えるとわかります。
転職先で仕事を任される際に、「責任感がある」から仕事を任されるのでしょうか?
違いますよね。
仕事を依頼する側からすれば、その仕事を「時間内に正しく完了」できるからこそ、その仕事を任せるのです。
事例を変えて、定食屋で考えてみましょう。
ランチを食べに来た人が、定食屋で焼肉定食を頼みました。
しかし、それほど混雑していないにもかかわらず、料理が一向に出てきません。
30分ほど時間が経って、ようやく出てきました焼肉定食。
でも、肉は火を入れすぎて固くなっており、ごはんはボソボソです…
昼休みの残り時間を気にしながら、慌てて食べて職場に戻りました。
……この定食屋に、また昼食を食べに来ようと思いますか?
「責任感をもって仕事を完了させる」(=料理を提供する)ことは当たり前のことであり、求められてるのは「時間と品質」(=提供時間と味)です。
すなわち、「責任感がある」ことで、仕事が任せられる(=採用される)わけではないことがわかります。
「強み」と「長所」の違いとは、
他者との差別化が可能であるかどうか?
このような判断基準で見るとわかりやすくなります。
「責任感がある」ことは「長所」にはなるものの、仕事を行う上では当たり前のものなので、「強み」にはなりえません。
定食屋の例でいえば、
安い / 早い / 旨い
上記のような「強み」があるからこそ、次も利用しようと思えるのです。
転職先で使える「強み」を見つけよう
転職先で使える自身の「強み」とは何なのか?
その答えを見つけ出すためには、自分が積み重ねた「キャリア(=経験)の洗い出し」をする必要があります。
職務経歴書でいうところの、「○○で○年間、営業として勤務」というレベルのものではなく、少なくとも1年単位くらいで洗い出しをしていきましょう。
「キャリア(=経験)」の洗い出しについては、このサイトでも他の記事で解説されていますので、ここではそれにプラスして実施すべきポイントを挙げます。
今までの職務経験を、1年単位で洗い出す
まずExcelに、社会に出てから現時点の順で「配属」「職務内容」「実績」を、1年単位で書き込んでいきます。
- 「配属」には、部署や規模など、所属企業に関係する内容を記入
- 「職務内容」は仕事内容や個人目標など、与えられた仕事に関する内容を記入
- 「実績」には、目標達成率や月あたりの作業本数など、仕事を行って実現した内容を記入
現時点までの流れを1年単位で書き込んでいくことで、どのような仕事を行ってきたのかを振り返ることができます。
現時点からさかのぼって、得たものを洗い出す
次は、現時点からさかのぼる形で、「年収」と「取得スキル」を書き込んでいきます。
- 「年収」には、これまでの給与明細や通帳内容などを確認し、賞与を含めた正確な数値を記入
- 「取得スキル」は、資格や資料作成スキルなど、その時点で身につけたもの(仕事の内外を問わず)を記入
現時点からさかのぼって書き込んでいくことで、各時点で得たものを、客観的な視点で確認することができます。
特別な出来事を洗い出す
最後に備考として、社会に出てから現時点までの順で、「特別な出来事」を書き込んでいきます。
「特別な出来事」には、昇進や結婚などのプラスになる出来事や、離婚や事故などのマイナスになる出来事のほか、リーマンショックやアベノミクスなどの、社会的な出来事についても記入しましょう。
このような「特別な出来事」を書き込んでいくことで、「職務経験」や「得たもの」の関連性(つながり)を裏付けすることができます。
Excel表から「強み」を抽出する
ここまでの作業により、
- 「昇進」や「昇給」は何を評価された結果なのか?
- 「年収」の上昇はどの程度あったのか?
こういったことを、理由付けすることができるはずです。
また、得たものに対して、
- 強みを発揮したことによるものか?
- 環境の変化によるものか?
上記のどちらに起因して得たものなのか切り分けすることで、あなたの本当の「強み」を分別することができるはずです。
「洗い出し」作業を行ったら、記入したExcel表をじっくり見て、「強み」といえそうなものを5つ(少なくとも3つ)抽出しましょう。
そして抽出した「強み」について、
他者との差別化が可能であるか?
上記について検討していきます。
他者との差別化とは?
自分が持っている「強み」について、他者と比較することは重要な視点ですが、ここでいう「他者」については、留意すべきポイントがあります。
最近は、なにかとニュースでもクローズアップされている、年金を例にして考えてみましょう。
60~65歳、65歳以降の年金受給者で、働いていて給与収入がある場合に、年金額が調整される在職老齢年金。
これは社会保険労務士(社労士)であれば、知っていて当たり前の知識です。
したがって、「他者」を「社労士業界」と置いた場合は、この知識は「強み」とはならないのです。
しかし「他者」を、「年金に疎い人」に置いたらどうでしょうか。
「年金に疎い人」に対して、年金額の調整について説明できるとすると、この知識は「強み」になりえます。
実際に筆者がお受けしているシニアの起業相談においては、法人設立時の役員報酬額と年金支給額の関係について説明する際に、在職老齢年金の知識を活用しています。
このあたりの詳細について、他の者では説明しきれないため、必然的に筆者にお鉢が回ってくるわけです。
「他者」を何に置くのかによって、「強み」の有効性は変化する
上記をよく理解したうえで、自身の強みの活かし方を考えてみましょう。
- 「強み」となるスキルを同業界で活かすのか?
- 「強み」となるスキルを欲している異業界に身を置くのか?
40代の転職においては、上記のような判断が重要となってきます。
同業界に身を置いた場合は、仕事の滑り出しは良いでしょうが、「強み」の有効性は確実に減退していきます。
突き抜けた「強み」や、組み合わせできる別の「強み」がないと、将来的に苦労することになるかもしれません。
異業界に挑む場合は、業界の学習から始まるので、仕事への順応には苦労するでしょう。
しかし、自身の「強み」を活かすことによって、企業に求められる人材として活躍することができれば、以前の年収を上回る日も近いかもしれません。
業界と対象企業の研究をして、強みを差別化しよう
40代の転職でまずやるべきことは、以下の2点です。
- 使える「強み」を洗い出すこと
- 「業界と対象企業」の分析により、「強み」を差別化すること
「業界と対象企業」という「他者」を選択するためには、業界の市場規模、将来性、企業がもつ問題点や課題など、詳細な分析をすることは避けて通れません。
なお分析のしかたについては、インターネット上の情報や現地調査等によって得られる、以下の情報を俯瞰すれば、ある程度の推測を立てることは可能です。
- 企業の取扱商材
- 車両の台数
- 売上高と従業員数
- 敷地面積と最寄り駅
- 企業沿革の変遷など
こういった分析をもとに、自身の「強み」が活かせる業界と企業を選定しましょう。
そして、応募企業が持つ問題点や課題に対して、
わたしの「強み」を活用することで、課題解決につながります
上記について企業側が理解できるように、履歴書や職務経歴書に落とし込んでください。
面接においても、あなたの「強み」の有用性をしっかりと自己PRをすることで、転職の成功に結び付けることができるはずです。
「弱み」からも目をそらしてはいけない
「強み」を見つけ出す方法についてお話ししてきましたが、「弱み」についてはどう向き合うべきでしょうか?
人間は誰しもが、何らかの「弱み」を抱えて生きているものです。
このようなことを考えただけでも、動悸が激しくなりそうですよね。
踏まえておいて欲しいことは、
「弱み」をごまかして、面接をしのごうとしないこと
このような点です。
履歴書や職務経歴書をきれいに整えて、面接でうまくしのいで採用されたとしても、実際に職場で働いたら確実にバレます。
ごまかしていた「弱み」がバレた時に、採用に携わった総務担当者や上司は、あなたをかばってくれないのです。
よほどの「強み」をもって、職場に利益をもたらしていないかぎりは、あなたの価値を必要以上に大きく損なう結果となって現れます。
最悪の場合、居づらくなって再転職という可能性もあるかもしれません。
「弱み」への3つの対応方法
それでは、自身の「弱み」についてどのように向き合えばよいのでしょうか?
じつは「弱み」とは、後天的に生じたものが多く、考え方次第で「なかったこと」にできる場合があるのです。
ここでは、「弱み」への対応方法を3つご紹介いたします。
1.「弱み」について分析して、克服するための手段を実行する
まずは自身の「弱み」について分析しましょう。
強みのお話をした際にご紹介した、経歴分析によって表出した「弱み」も対象となります。
また、資質的なところでうまく言葉にできないものについては、「クリフトンストレングス」という自己分析ツールを利用してみましょう。
ほとんどの「弱み」は、対策を講ずることによって、克服することができます。
よくある例でいえば、「喋るのが苦手」という弱みですが、こういった抱えている人が多い「弱み」はビジネスになるのです。
実際に、解決に導くための関連書籍や各種教室などが、世の中に数多く存在しています。
じつは筆者も喋るのが苦手でしたが、関連書籍や話し方教室で得た解消法を実践するうちに、「苦に感じない」程度にまで改善しました。
書籍なら1冊あたり1,000円程度、話し方教室は6ヶ月で20,000円程度です。
経歴的な特徴について、例えば「大卒ではない」ことが、「弱み」だと認識している方もいるかもしれません。
ただしこれも、通信制大学で学位を取得するという方法で、解決することが可能です。
通信制大学では、放送大学や産業能率大学が有名ですが、4年制の有名大学(慶應義塾大学や法政大学など)も通信教育課程を開講しています。
内閣府が平成30年に公表した年次経済財政報告によると、
通信講座には、約16万円の年収上昇効果がある
このように報告されており、「学び直し」(リカレント教育)としても、有意な結果が確認されています。
通信制大学で必要となる学費は、50~100万円程度です。(特殊な大学や課程では300~400万円)
事例としてご紹介したように、「弱み」を克服するための手段は、探せばすぐに見つかります。
ただし、それなりのお金と時間が必要となりますので、
結果が出るまで実行できるか?
上記がカギとなるでしょう。
「弱み」の克服とは、「資格の取得」に近いものがあるように感じます。
2.「強み」の補強材料に変換できないか考える
「弱み」を克服するだけの金銭的・時間的な投資ができない場合は、
その「弱み」が、あなたの「強み」の補強材料にできないか?
上記について分析してみましょう。
例えば、「喋るのが苦手」という「弱み」がある一方で、「事実の整理が得意」という「強み」があった場合。
こういった方であれば、
個人顧客からの苦情への対応が得意である
上記のような可能性が考えられます。
個人顧客の苦情については、
何が原因でどうしてほしいのか?
このような点について、ヒアリングをしながら事実整理する必要があるでしょう。
もし「喋るのが苦手」な方であれば、感情が高ぶっている顧客の言葉を、こちらから遮ることはできません。
苦手で喋れない分、顧客が何について苦情を持っているのかについて、しっかりヒアリングすることが可能です。
結果として、的確な対応をとれる可能性が高まるのです。
しかし、同じ業務を「喋りがうまい人」が対応すると、その場を早く収めようと顧客の発言を遮る形で対応してしまいます。
顧客からすれば、
このような形で、事後に炎上してしまうケースがあるかもしれません。
「喋るのが苦手」という弱みがあるからこそ、
顧客の想いについて、傾聴することができる
上記のような「強み」を得ることができるのです。
3.転職先に関連しそうな「弱み」なのか分析する
投資するだけの時間的・金銭的な余裕がなく、「強み」との関連付けも難しい
このような場合は、転職先の業務で関連しそうな「弱み」なのか、分析してみましょう。
もし、その「弱み」が転職先に関連する内容である場合は、残念ですが転職先を変えることをおすすめします。
その「弱み」が、仕事の足を引っ張る結果になるからです。
逆に、転職先の業務で関連しない「弱み」なら、そもそも「弱み」になりません。
たとえば、「喋るのが苦手」という技術者は数多くいますし、中高年齢の転職であれば、そもそも学歴不問である場合がほとんどでしょう。
転職先で必要性が低い要素は、「弱み」とはならないので、意識しないことが重要です。
なお、先述したような「目をそらす」という行為は、
「弱み」が転職先で必要性が低いかどうか?
上記を確認できていない状態なので、これはNGとなります。
一方で「意識しない」という行為は、転職先での必要性が低いことが確認できているからこそ、許されるものであるという違いですね。
まとめ:「強み」を活かし「弱み」を利用すること
今回は、転職活動をする際に自身の「強み」と「弱み」を分析することの重要性と、具体的に見つけ出す方法についてお話ししました。
あなたの「強み」と「弱み」について、クロスSWOT分析という分析手法に当てはめると、以下の図のようになります。
お話しした「強み」を活かすという方法は、クロスSWOT分析図の「差別化」の戦略です。
そして「弱み」の対応方法として、ご紹介した方法1が「克服」、方法2は「強み」の亜種活用となり「差別化」と「克服」、方法3が「回避」の戦略となります。
まずは、あなたのキャリアを通じて得た、自身の「強み」を見つけ出しましょう。
あなたがこれまでの社会人経験で得た経験は、他の人では同じものを得ることはできません。
自身の「強み」を必要としている企業を見つけ出し、自信を持って自分を「営業」することです。
また、自身の「弱み」についても目をそらさず、利用できるかについて分析することが重要となります。
なぜなら分析することで、その「弱み」を解消することができ、さらに「弱み」を「強み」に変えられる場合もあるからです。
どうしようもない「弱み」については、転職という環境の変化を利用して、「なかったことにする」のも有効な方法でしょう。
40代の転職を成功させるためには、
強みを活かして、弱みを利用する
上記のような意識を持つことが大切です。
ご紹介した方法でしっかりと自己分析を実施して、万全な対策をもって、ぜひ内定を勝ち取ってください!
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