キャリアコンサルタントのRikaです。
30~40代の方の転職支援業務を中心に、北海道で活動しています。
40代を過ぎると先のキャリアの見通しもつく頃ですから、
- このまま定年まで現職に留まるべきか?
- 地元に帰って再スタートをきるべきか?
このような悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
しかし40代では、20代・30代のようにサクサク転職活動が進みません。
そもそも、受けたい求人が地方にはないという現実も立ちはだかります。
Uターン・Iターン転職では、やりがいや年収UPに固執しすぎると前にすすみません。
報酬面だけではなく、地方で暮らすことそのものに強い理由を持ち、企業選びの軸を幅広く設定できるかどうかが、成功と失敗の分かれ目となるのです。
今回の記事では、Uターン・Iターン転職で大きな失敗や後悔をしないために、
- 知っておきたい地方の転職事情
- Uターン・Iターン転職の準備や進め方
- 内定が出てからやるべきこと
上記について徹底解説いたします。
大手人材紹介会社の地方支店で、キャリアコンサルタントとして数多くのUターン・Iターン転職を支援してきた、筆者の具体的なノウハウに基づいています。
ぜひ最後までご覧になってお役立てください。
目次
Uターン・Iターン転職の基礎知識
Uターン転職とIターン転職とは、どのような転職なのかご存知ですか?
まずは基本的なことを確認しておきましょう。
Uターン・Iターン転職とは?
学校卒業後、就職を機に上京した人や転勤により故郷から離れた人が、自分の地元に戻るための転職をUターン転職といいます。
それに対して、今まで住んだことのない場所、例えば配偶者の実家がある土地や、かねてから憧れていた土地になど転職することを、Iターン転職とよびます。
Uターン転職の平均年齢は36.7 歳
Uターン・Iターン転職は、年齢による影響はあるのでしょうか?
このような思いを持っている方は少なくないはずです。
しかし、現実は甘くないと考えておいたほうがよいでしょう。
ある調査によると、Uターン転職の平均年齢は36.7歳となっており、地方でも企業が欲しいのは比較的若手の人材で、40代を超えると苦戦する様子がうかがえるのです。
転職を考えるきっかけや理由は?
40代の場合は、地元にいる両親のことを想って、Uターン・Iターン転職を検討し始めるケースが多くなっています。
両親の年齢も70歳前後になって、介護についても現実的に考え始めている年代です。
さらに相次ぐ災害のニュースなどを目の当たりにすれば、いざという時のために、近くに住んでおきたい気持ちが高まるのは当然といえます。
都会のストレスから開放されたい気持ちも相まって、
- 自分の仕事がひと区切りついたとき
- 子供の進学にあわせたタイミング
上記のようなタイミングで、転職を決断するのが代表的なパターンとなっています。
後悔しないために知っておきたい地方の転職事情
Uターン・Iターン転職のように居住地を変える転職では、どんなことがハードルになるのでしょうか?
後悔しないために知っておきたい、3つの大きな障壁についてお話しします。
やりたい仕事が地方にあるとは限らない
多種多様な求人が豊富に揃っている都会と異なり、地方では業界・職種ともに求人は限定的です。
政令指定都市クラスの地方都市であっても、求人の種類と量が少なくて、選択肢の乏しさを感じるでしょう。
例えば北海道札幌市では、第二次産業(製造業)の割合が少なくて、第三次産業(サービス業)の割合が高いという特徴があります。
それは単にメーカー営業職や製造職の求人が少ないというだけでなく、
研究・商品企画・調達・物流・販売・PR・その他管理系業務
上記のような、付随する業務も発生しないということを意味しています。
一方でサービス系の求人やコールセンターや流通・小売系求人が、求人雑誌には多数掲載されている状況です。
サービス系などの職種は、他業種からの転職が比較的容易であるため、応募すれば採用のチャンスが高まります。
このように地方においては、その土地の産業構造が求人のバリエーションに直結するのです。
Uターン・Iターンを考えるその土地の事情によって、今のキャリアを継続できるとは限りません。
もし仕事内容に強いこだわりがあるのなら、希望の求人と巡りあうまで、長い時間をかける覚悟が必要となるでしょう。
都会と地方の年収格差を理解しておく
あなたは地方に転職するにあたり、どの程度の年収ダウンを覚悟しているでしょうか?
このように事前に譲歩されていているのなら、それは素晴らしいことです。
しかしながら、地方ではさらに下がる可能性を想定しておいたほうがよいでしょう。
厚生労働省が毎年公開している「賃金構造基本統計調査」によると、例えば福岡県の平均年収は東京都の約75%程度です。
月給にすると5万円程度のダウンとなり、地方の物価が都会と大差がない今、Uターン・Iターン転職によって、可処分所得が下がることはほぼ確実といえるでしょう。
ただし、この年収ダウンを副業などでカバーする方法もあります。
副業解禁の動きが活発化するなかで、地方でも柔軟に対応しはじめる企業が徐々に増えてきました。
近年では、クラウドソーシングの発達により、副業の種類も大変豊富になっています。
もし副業に興味があるのなら、在職している今のうちに少し始めておくことで、転職後の生活に何かしら役立つかもしれません。
本業の他で収入があるということは、気持ちの上でも余裕をもたらし、柔軟な企業選びへとつながるでしょう。
都会と地方では企業風土や業務範囲が異なる
Uターン・Iターン転職をするからには、
このように考える方が多いはずです。
そうなると大企業の支店配属の求人は、転職先の選択肢から除外することになり、おのずと地場企業が有力選択肢となるでしょう。
ただ地場企業と都会の企業では、企業風土や業務範囲が異っているのです。
あらためて北海道札幌市を例に出すと、札幌市内にある企業の約半数が従業員5人未満で、約9割が50人未満で構成されています。
この規模の中小企業では、業務の役割分担が大企業と異なって、不明確なところが多々あるのです。
例えば大企業では総務部と人事部はたいてい別部署ですが、中小企業では総務人事課とひとつの部署になっています。
総務の役割のなかに、IT担当者が含まれていることすらあるのです。
1人で何役もこなして守備範囲を広くしないと、地方では即戦力と見なされません。
加えて40代ともなれば、マネジメント経験も問われるでしょう。
これまでスペシャリストとして経験を積んでこられた方は、地方ではゼネラリスト的要素を求められることになるのです。
また、以下のようなことなど、都会では一般的だと思っていた企業文化が、地方ではまだ浸透していないと感じることも多いでしょう。
- 明確な評価制度が整っていない
- コンプライアンスの徹底度が弱い
このような環境の変化への適応力が、Uターン・Iターン転職においては求められるのです。
Uターン・Iターン転職を進めるための準備とは

Uターン・Iターン転職を考え始めたら、本当に転職するかどうかを決めるためにも、まずは情報を集めましょう。
また、家族の合意が得るための段取りや、転職活動の進め方についても準備を進めていく必要があります。
希望地域の求人情報を調べる
ハローワークのWebサイトや転職サイトをのぞき、希望勤務地の求人を幅広く眺めてみましょう。
スクロールしていくうちに、業界や職種の傾向、年収の相場などを掴むことができます。
ハローワークの求人情報をまずチェックしよう
地方では中途採用をすると決めたら、真っ先にハローワークに掲載依頼を行う企業が、いまだに数多く存在しています。
採用コストをできるだけ抑えるために、まずはハローワークに掲載をして反応を見るのです。
ハローワークでよい応募者がいなければ、
- 掲載料のかかる転職サイトに掲載する
- 人材紹介サービスを利用して掲載する
上記のように段階を踏んで募集していくのです。
したがってUターン・Iターン転職では、まずはハローワークのWebサイトにある求人を、ひととおり確認したほうがよいでしょう。
転職サイトは大手と地場の両方を活用する
転職サイトは3~4社をお気に入り登録をしておいて、サイトの求人更新日にあわせて、週に数回チェックをする必要があります。
また大手の転職サイトだけではなく、地場の就職求人サイトも必ずチェックしてください。
地場サイトの方が掲載料が安いため、そこにしか掲載されていない求人があるためです。
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地元紙の求人広告にしかない良い求人もある
そのほかでも、地元の新聞の求人広告欄も定期的に確認すると、掘り出し物の良い求人に出会えるかもしれません。
地場の優良企業や財団法人・社団法人といった求人が、たまに掲載されているのです。
転職エージェントはサービス期間に注意
転職エージェントにはこの時点で登録してもよいですが、サービス内容によっては注意が必要です。
エージェント会社によっては、サービス期間が3ヵ月と決まっているところもあるので、担当アドバイザーがつくと、活動を急かされてしまうことがあります。
気持ちが固まっていないのに、応募書類作成や面接準備をすすめることになり、主体的な動きが取れない可能性もあります。
転職エージェントへの登録は、転職を決意した後の方がよいでしょう。
家族との合意形成があってこそ
Uターン・Iターン転職に家族を巻き込む場合は、当然のことながら、家族の理解と協力が必須となります。
自分には縁がある土地でも、家族にとっては無縁の土地です。
ガラリと変わった環境で暮らすことについて、ご家族は具体的に想像がついているでしょうか。
交友関係が薄い土地で暮らすストレスは、思っている以上に大きいものです。
加えて、年収ダウンが予想されるなかで、生活の質にも多少の変化があることを覚悟してもらわねばなりません。
移住後の生活が変化することについて、きちんとご家族で話し合いを深めておくことは、非常に重要度の高いミッションといえるでしょう。
辞めてからの転職活動はリスクが高い
このような相談を、40代のUターン・Iターン転職希望者からよく受けるのですが、答えは「NO」です。
在職中に転職活動することを、まず第一に考えましょう。
求人数が都会に比べ少ないこと、40代で書類通過率も低いことをふまえると、転職活動の長期化が予想されます。
転職先が決まる前に退職してしまうと、離職期間が長くなるリスクがあるのです。
長い離職期間(ブランク)は書類選考上でも不利になるため、負のスパイラルにはまってしまいます。
また、精神的にも金銭的にもかなり厳しい戦いになってしまうため、可能なかぎり現職中の転職活動を心がけましょう。
書類選考から内定までは、1社につき3~4週間程度はかかります。
何社も応募することを踏まえて、その応募書類や面接対策への準備、内定後の入社前準備も含めると、半年程度は余裕をもって活動するのがベターです。
書類選考や面接対策については、転職エージェントのキャリアアドバイザーや近隣のハローワークで指導を受けられます。
自分に合ったアドバイスを受けて、選考の通過率を上げていきましょう。
Uターン・Iターン転職活動のやり方
Uターン・Iターン転職の情報収集や準備を経て、転職活動をすると決めたら、さっそく具体的に活動を進めていきましょう。
ここでは、Uターン・Iターン転職を具体的に進めるやり方についてご紹介します。
転職エージェントへの登録は必須です
新卒の就職活動であれば、友人と情報交換をしながら進められますが、転職活動においては基本的に一人です。
とくに40代のUターン・Iターン転職ともなると、同時期に同じような転職を考えている知人を見つけることは、至難の業といえるでしょう。
そこでよき相談相手として、転職エージェントの活用をオススメします。
転職エージェントには、転職のあらゆる疑問に専門的に答えられる、キャリアアドバイザーが在籍しています。
- 非公開求人の紹介をしてくれる
- 気になる企業へ売り込みをかけてくれる
- 入社する場合の条件交渉を代行してくれる
上記のように非常に頼もしい存在です。
転職エージェント(人材紹介会社)は、国内に数万社ありますのでその特徴もさまざまです。
まず最初は、全国展開している大手の会社に3~4社登録し、次に地場の人材紹介会社へ1~2社登録するとよいでしょう。
登録する際の注意点としては、業務経験の記載内容が薄かったり、極端に狭い希望条件で登録をしないことです。
40代という年齢もありますので、
このような言葉が添えられて、選任アドバイザーをつけてもらえないことがあります。
まずはアドバイザーに話を聞いてもらうためにも、これまでの経験を細かく記載して、できるだけ広い希望条件で入力するようにしましょう。
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現地の面接を一度は受けておこう
中途採用の選考では、書類選考後に面接が通常2~3回実施されます。
その全てを現地で受けなくてはならないかというと、そうともかぎりません。
業種によりますが、1次面接を電話やWeb面接(スカイプ面接)で実施してくれる企業が増えているのです。
ほかにも人事が出張ついでに近くまで来てくれるパターンや、東京や大阪の貸オフィスで選考会を開いてくれるケースもあります。
ただし、必ずいちどは現地のオフィスで面接を受けることをオススメします。
入社後のギャップを防ぐために、
- どんな仲間と働くのか?
- 社風はどのような感じなのか?
上記のようなことを、自分で確かめるようにしましょう。
現地面接の際に、交通費補助が出るのは3割ぐらいの企業しかありません。
自費では金銭的負担も大きいため、できるだけ1日で複数社の選考を受けられるように調整しましょう。
午前中に1社、午後は2社という感じで組めると、交通費を無駄にせず効率的です。
あらかじめ交通機関の時刻表を確認して、始発と終発時刻を調べておきましょう。
転職フェアに参加してみよう
全国の主要都市では、大手人材紹介会社による転職フェアが頻繁に開催されています。
中途採用を行う企業が一堂に会して、転職希望者が気になる企業のブースを訪問して、企業説明や簡単な面接が受けられる仕組みです。
たいていは金曜~日曜のスケジュールで開催されており、在職中の応募者にとっては、集中的かつ効率的に転職活動を行えるメリットがあります。
東京や大阪で開かれる転職フェアでは、Uターン・Iターン転職希望者向けのブースコーナーが設置されることも。
そのコーナーでは地方企業の出展がまとめてあり、各ブースに人事担当者が常駐していて、わざわざ地方に行かなくても情報が手に入るのです。
面接対策講座など、転職活動に役立つ無料コンテンツも充実しているので、ぜひ参加することをオススメします。
また大都市圏開催よりも頻度は少ないですが、福岡、仙台、広島、札幌でも転職フェアが開催されますので、帰省をかねて参加するなど検討してみましょう。
『地域名』+『転職フェア』で検索すると、直近の日程を調べることができます。
内定が出てからやるべきこと

転職活動を経て無事に内定がもらえると、ひと安心するところですが、内定イコール転職活動の終了ではありません。
内定をもらってから入社するまでに、行うべきことはたくさんあります。
年収条件や入社日の確認と交渉
内定の連絡を受け取った場合は、まずは内定通知書の中身を確認しましょう。
地方にある小規模の会社では、「雇用条件は口頭で伝えるのみ」というところもありますが、必ず社判の入った書面でもらうようにしてください。
書類名は「内定通知書」もしくは「雇用条件通知書」、このどちらかの文書名で発行されることが多いです。
年収だけではなく月収、残業代、賞与といった内訳の確認や、休日や有給日数などの細かいところまで、しっかりチェックしておきましょう。
上記のような場合には、企業側の人事担当者に確認や交渉をする必要があります。
このような場合に、転職エージェント経由で応募している企業であれば、担当アドバイザーが間に入って交渉してくれるので便利です。
年収交渉には様々なケースがあり、テクニックも必要ですので、自己判断せずにプロに相談するほうがよいでしょう。
内定通知書の入社日は、(仮)の文言が入った日時で記載されるのが通例です。
内定受諾をしたのちに、企業と相談して決めていきましょう。
転居を伴わない転職であれば、内定後30~45日程度で入社するのが平均的です。
しかし、Uターン・Iターン転職では転居を伴うため、家探しや諸手続きを含めると、入社まで45~60日前後はかかります。
できるだけ自身と家族に負担のない形で入社できる、ベストな入社日がいつなのかを事前に検討しておき、企業側と相談しながら確定しましょう。
企業側の希望入社日と自身の入社希望日が合致すれば、なんの問題もありませんが、たいていの場合はズレが生じるので、双方の歩みよりが必要となります。
- 有給消化日数を減らして企業の希望入社日に合わせる
- 一時期だけ単身赴任という形をとり、時期をみて家族を呼び寄せる
上記などのように、さまざまなケースがあり得ます。
なお引っ越し費用について、企業が補助を出してくれるケースは、全体の1割程度しかないので、あまり期待はできないでしょう。
退職手続きや引っ越し準備など、やることは山のように…
無事に入社する企業が決定すれば、新しい生活が現実的になり、期待感で胸がいっぱいになるでしょう。
長かった転職活動が終わってほっと一息ですが、しかしそれも束の間で、現職の会社の退職手続きが始まります。
退職を申し出れば、すぐに引き継ぎ業務が始まりますし、日中は社内外の打ち合わせと挨拶回り、夜は連日送別会の日々という人もいるのです。
さらにUターン・Iターン転職の場合は、同時に家探しや引っ越し手配を進めなければなりません。
持ち家の場合であれば、不動産の売却手続きも必要となります。
配偶者が仕事をしていれば、そちらの退職交渉も必要ですし、お子様の転校手続きや習い事の終了手続き、自家用車の移動手続きなど…
やることは山のようにあるでしょう。
家族のフォローを怠っていると、この段階でトラブルに発展する場合もあります。
いつまでに何を完了させておく必要があるのか?
家族でしっかり話し合って、事前にきちんとスケジュールを組んでおきましょう。
まとめ:Uターン・Iターン転職であなただけのキャリアデザインを描こう
今回は、Uターン・Iターン転職で大きな失敗や後悔をしないために、考え方のヒントや活動のノウハウをご紹介しました。
転職すれば、人間関係や会社でのキャリアが一旦リセットされて、ゼロからの再スタートになります。
Uターン・Iターン転職は、間違いなく人生のなかでも最大級の転機となるでしょう。
失敗や後悔をすることがないように、半年~1年くらいかけて準備しておくのが理想的です。
求人が少ないことや年収ダウンを強調しましたが、通勤時間が短縮されることや自然の多い環境で生活できるなど、地方ならではのメリットもあります。
上記のような価値観を整理することが、転職活動でブレない企業選びの軸となっていくでしょう。
また、必ずしも企業へ再就職することだけが、Uターン・Iターンの唯一の方法ではありません。
たとえば、起業することも選択肢のひとつです。
- フリーランスになって自分の得意分野で勝負をかける
- 新規事業を実現するために経営者への転身を果たす
このような人を、筆者は実際に見てきました。
これからのキャリアを「どこで、だれと、どのように」重ねていくのか、ライフプランは幾通りもあります。
新しい技術やサービスが次々に生まれている今だからこそ、あなたが新しいUターン・Iターン転職の形を作ることだってあり得るのです。
あまり前例にとらわれ過ぎずに、あなただけのキャリアデザインを描きましょう。
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